独化学大手BASFの石油・天然ガス子会社ヴィンタースハルは2日、イラン国有石油会社(NIOC)との共同投資計画を凍結すると発表した。米トランプ政権がイラン制裁の再開方針を打ち出していることを受けた措置。テヘランの拠点も閉鎖する。
イランは2015年、欧米6カ国との間で核合意を締結したことから、同国に対する制裁は解除された。BASFのクルト・ボック社長(当時)はこれを受けてイランを訪問。同国事業の本格再開に乗り出した。
イランはペルシャ湾地域最大の石油化学メーカーになるという目標を掲げていることから、BASFは同国と共同で石化事業を行うことを計画。『ハンデルスブラット』紙の16年の報道によると、同社はイラン南西部のブーシェフルに40億ドルを投じて石化プラントを建設する考えだった。
ヴィンタースハルは同石化プロジェクトに絡んで、石油の共同採掘に向けた覚書をNIOCとの間で16年4月に締結した。同石油採掘計画が凍結されたことで、BASFのイラン石化プロジェクトも宙に浮くもようだ。
ヴィンタースハルはロシア系投資会社レターワンの石油・天然ガス子会社DEAと合併することで合意している。合併で設立される新会社の経営権はBASFが握ることになっている。DEAはエジプトとアラブ首長国連邦に採掘権益を持つことから、BASFは米国の制裁リスクを冒してまでイラン事業を先に進める必要もない。
『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、ヴィンタースハルとNOICの共同投資計画は課税や権益比率をめぐる問題が大きなネックとなり停滞していた。この事情も今回の決定の背景にあるという。