雇用関係の終了時点までに消化できなかった年次有給休暇は金銭に換算して退職する被用者に支給される。これは有給休暇法(BUrlG)7条4項に明記された決まりである。では、退社から長い時間が経過している場合でも被用者はこの権利を行使できるのだろうか。この問題を巡る係争でカールスルーエ労働裁判所が3月に判決(訴訟番号:7 Ca 214/17)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は運輸会社の元社員が同社を相手取って起こしたもの。同社は2015年6月30日付で営業を停止し、現在は会社清算手続きが行われている。
被告は同年2月26日付の文書で4月末付の解雇を原告に通知した。原告はこれを受けて求職活動を開始。同年5月15日から別の会社に勤務することが決まったため、4月14日付の退社を被告との間で取り決めた。
原告は16年5月、被告に文書を送付し、15年3月と4月の給与を支給するよう要求した。だが、被告は両月の給与を16年1月時点で支払っていたことから拒否した。
原告はその約10カ月後の17年3月9日、被告に電子メールを送付し、14年と15年の年次有給休暇を計27日、消化できなかったとして、これを換金して支給するよう要求。1,306.38ユーロの支払いを求めた。被告が拒否したことから8月30日に提訴した。
一審のカールスルーエ労裁は、有給休暇の換金支給請求権はすでに失効しているとして原告敗訴を言い渡した。判決理由で裁判官はまず、最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が17年10月17日に下した判決(訴訟番号:9 AZR 80/17)で示した請求権失効の要件を指摘。◇権利が発生した時点から長い時間が経過している(時間要件)◇事後的な権利の請求が信義義務に反し債務者(ここでは被告)に対し請求することは正当とみなし得ない(事情要件)――の2要件が当てはまる場合は請求権が失効すると説明した。
そのうえで、原告が有給休暇の換金支給を請求したのは請求権が発生した退社時点からほぼ2年後であり、BAGが示した時間要件を満たしているとの判断を示した。
また、◇被告企業は提訴の2年以上前に営業を停止している◇原告は16年5月に15年3月と4月の給与支給を要求した際に有給休暇の換金支給を請求しておらず、その10カ月後の17年3月に有給休暇の換金支給を請求されることの予想を被告に要求することはできない――として、事情要件も満たしていると言い渡した。