リンデとプラクスエアの合併とん挫も、米当局の事業売却要求で

工業ガス大手の独リンデは4日、米同業プラクスエアとの合併計画がとん挫する可能性が出てきたと発表した。米連邦取引委員会(FTC)が計画承認の条件として要求する事業売却を実施すると、合併実施の前提条件を満たせなくなるためだ。両社は同要求が合併計画にもたらす影響を評価するとともに、FTCと協議を続け、翻意を働きかける意向だ。

両社は2017年6月、対等合併で最終合意した。合併後に誕生する新会社は売上高が約287億ドルに達し、仏エア・リキードを抜いて世界最大手となる。

これまでに計16の各国当局から承認を得た。一方、米国、欧州連合(EU)、中国、インド、韓国、ブラジルなどの当局は現在も買収計画の審査を行っている。このうちEUの欧州委員会については、同委の要求を受けてプラクスエアが欧州事業を大陽日酸に部分売却する契約を締結したことから、ほぼ確実に承認するとみられる。

リンデとプラクスエアは当局の要求を受けてこれまでに、プラクスエアの欧州事業部分売却のほか、リンデの北米事業の大半と南米事業の一部を独同業メッサーと投資会社CVCキャピタル・パートナーズの企業連合に売却することを取り決めた。

リンデとプラクスエアは合併合意に際し、独禁当局から売上高で37億ユーロ以上、営業利益で11億ユーロ以上の事業放出を命じられた場合は合併を取り止め得ることも取り決めた。これまでに成立した売却合意では売上高で計27億ユーロ、営業利益で7億6,000万ユーロの事業を放出することになっている。FTCの要求を加算すると、売上高と営業利益の放出上限枠を突破することから、合併計画に黄信号が灯りだした。

リンデのアルド・ベローニ社長はこの問題に絡んで3月、放出上限枠を超える事業放出を命じられても、合併取り止めの権利が行使されるとは限らないと述べ、厳しい条件を要求されても合併を実施する可能性があるとの見解を示した。このため、売上高で37億ユーロ以上、営業利益で11億ユーロ以上の事業放出を余儀なくされても、合併を実施する可能性はあるものの、取り止めを選ぶ可能性も排除できない。FTCの要求を履行した場合に合併後の新会社が受ける影響の評価と、FTCとの今後の協議がカギを握る見通しだ。

新会社はアイルランドに本社を置くことになっている。これにより米国に本社を置く大企業が1社(プラクスエア)、減少することから、自国企業の国外流出に批判的な米トランプ大統領がFTCの審査に介入したとの見方もある。

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