英米系格付け会社のフィッチ・レーティングスは3日、チェコの格付けを「Aプラス」から「AAマイナス」へ一段階引き上げた。見通しは「安定的」。好景気に加え、慎重な財政運営が国家債務の縮小につながったことを高く評価した。
国家債務の対国内総生産(GDP)比は2013年の44.9%から昨年には34.2%まで低下した。付加価値税(VAT)収入など歳入が増加する一方、歳出の伸びは緩やかで、財政が健全化した。政府の予定する公務員賃金と年金の引き上げの影響は限定的で、国家債務は20年に30.1%まで改善する見通しだ。
経常黒字と海外直接投資(FDI)受入額が好調に推移していることから、チェコ経済は国外からの影響にあまり左右されない状況にある。主要産業の一つである自動車製造業の輸出が堅調を維持し、2018~20年の対GDP比経常収支は平均0.6%の黒字となる。
保護主義の影響を受ける可能性はあるが、米国が欧州連合(EU)産乗用車に25%の輸入関税を課したとしても、GDPの縮小幅は0.4ポイントにとどまる。
対外債務依存度は高まっている。しかし、昨年4月、通貨コルナ高の圧力を吸収する為の替介入措置を中央銀行が停止した以降も大きな資本流出はなく、中銀の外貨準備高は6月末現在で1,440億米ドル(GDPの67%)に上る。銀行業界の流動資金は十分で、財政運営も健全なことから、資本流出に関連するリスクは比較的小さい。
経済成長は今後も個人消費と投資がけん引する。これにはEU助成金を活用したプロジェクトの実施加速も貢献する。ただ、内需拡大で輸入も増加し、成長率は今年の3.2%から来年は2.9%、2020年には2.7%に減速する。
銀行業界は資金力が十分で不良債権率も低い。担保融資が急増しているが、中央銀行が今年6月に自己資金積み増しなどを義務付ける措置を実施したことから、今後は新規融資のペースが鈍る。
失業率は今年1-3月期(第1四半期)にEU最低の2.4%を記録。これを反映するように賃金上昇率は8.6%と、GDPや生産性の伸びを大きく上回っている。人材不足は投資と成長を阻害する大きな原因の一つとなっている。
賃金上昇と原油高を背景に、インフレ率は低水準ながら上昇している。2018~20年は2%前後で推移する見通しだ。政策金利も段階的に上昇し、3%の中立金利に達する。