「欧州勢の電池セル生産はまだ間に合う」=VW社長

独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループのヘルベルト・ディース社長は欧州の車メーカーが電動車用電池セルの供給をアジアメーカーに全面依存していることに絡んで、欧州勢は自らセルを生産すべきだとの立場を示した。「自動車販売に占める電動車の割合が2025年時点で10%になると仮定すると、車載電池の売上高は500億〜600億ユーロに達する」と指摘。これほど巨大な市場をみすみすアジア勢に委ねるのは好ましくないとの認識を示すとともに、欧州勢参入の余地は残されていると明言した。経済紙『ハンデルスブラット』のインタビューで明らかにした。

VWは6月、米国のスタートアップ企業クアンタムスケープと共同で合弁会社を設立することを明らかにした。全固体電池の実用化を加速することが狙いで、まずは2〜3年をかけて量産が可能かどうかを検証。可能という結論が出た場合は2022〜23年にパイロット生産を開始し、24〜25年から量産体制に入る。ディース社長は1日の決算発表でも「アジアのメーカーにいつまでも依存しているわけにはいかない」と述べ、ドイツを含む欧州に工場を設置することを視野に入れていると語った。

今回のインタビューでは、セルの生産はVWなどの自動車メーカーが単独で行うのではなく、車メーカーを含むコンソーシアムないしサプライヤーが行うのが好ましいとの立場を示した。VWがセルを自力生産しても、ダイムラーなどの競合はVW製セルを調達しないためだ。この認識の背景にはVW製セルの利用がVWグループ内に限られると、巨額の開発・生産投資を回収できないなどのリスクが高まるという事情があるとみられる。

ディース社長は自動車業界を根底から変えるデジタル化の波にも言及。VWはこの分野で米グーグル、アップル、中テンセント、アリババなどのIT大手に後れを取っているとして、劣勢挽回に向けて提携や買収を活用する考えを明らかにした。「VWのような企業が衰退することは許されない」としている。

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