走行禁止回避策で与党合意、一部都市では浄化装置後付けと優遇買替の選択 権も

独政府・与党は2日未明、都市の大気浄化に向けた政策案で合意した。旧型ディーゼル車の走行禁止を回避することが狙いで、窒素酸化物(NOx)濃度の高い都市とそれらの都市の手工業・配達業者を対象に、排ガス浄化装置(尿素SCRシステム)の後付け費用を補助。また、NOx濃度が特に高い14都市では旧型ディーゼル車の保有者に尿素SCRシステムの後付けないし優遇買い替えの権利を認める。

欧州連合(EU)加盟国はNOxの濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。ドイツではベルリン、ミュンヘンなどの都市・地域で同規制を順守できない状況が続いており、計65カ所で違反が確認されている。

同基準を順守するために走行禁止ゾーンを設定するよう命じる裁判所の判決はすでに複数の都市を対象に下されている。走行禁止の開始時期はシュツットガルトで来年1月1日、フランクフルトで同2月1日と目前に迫っている。政府は走行禁止の導入を回避するために速やかな対策を実施しなければならない状況に置かれていることから、今回の合意を取り決めた。

走行禁止の回避策は(1)NOx濃度規制に違反するすべての都市を対象とするもの(2)NOx濃度が50ミリグラムを超える14都市を対象とするもの――の2種類からなる。

(1)は◇当該都市が保有する3.5トン以上の車両(ゴミ収集車や道路清掃車)◇当該都市と周辺地域に住む手工業者と配達業者の車両(2.8〜7.5トン)――に尿素SCRシステムを後付けする場合、国が補助金を交付するというもので、補助率は都市の保有車両で80%、手工業・配達業者の車両で最大80%となっている。この措置を実施すれば、NOx濃度50ミリグラム以下の都市では走行禁止措置を導入しなくても40ミリグラム規制を遵守できると政府はみている。

濃度50ミリグラム超の都市では旧型ディーゼル車の保有者(周辺地域からの通勤者を含む)が◇尿素SCRシステムの後付けを自動車メーカーの費用負担で行う◇優遇下取り価格で車を買い替える――のどちらかを選択できるようにする。対象となるのは走行1キロメートル当たりのNOx排出量が270ミリグラム以上の車両。旧型車両に該当する欧州排ガス基準「ユーロ4」「ユーロ5」の対応車であっても同270ミリグラム未満の車両は走行禁止の対象から除外する。

自動車メーカーは旧型車両の優遇下取りキャンペーンをすでに昨年、実施した。この時は買い替える車両が新車に限られていたが、政府は今回、中古車であっても走行禁止の対象にならない車両(NOx排出量270ミリグラム未満)であれば優遇下取りキャンペーンで購入できるようにすることを、独メーカーとの間で取り決めた。外国メーカーにも同様の措置を取るよう要求している。

尿素SCRシステムの後付け対象となるのは、後付けの効果でNOx排出量が270ミリグラム未満になる車両に限定される。現行法では排ガス浄化装置を後付けした車両の走行が認められないことから、政府は法改正を行う方針だ。

独メーカーは優遇下取り措置に同意したものの、尿素SCRシステムの後付けについては同意していない。アンドレア・ショイアー交通相は記者会見で、尿素SCRシステムの後付けについては費用負担の問題と技術的に可能かという問題をメーカーと今後も協議していかなければならないことを明らかにした。

BMWとオペルは後付け拒否の意向をすでに表明している。VWは後付け費用の一部しか負担しない考えのようだ。

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