独フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門トレイトン・グループが事業拡大に向けた布石を相次いで打ち出している。17日には日野自動車との提携、合弁会社設立と欧州会社化を発表。18日には中国重型汽車集団(CNHTC)との協力関係を強化することを明らかにした。
トレイトンは4月、日野との間で戦略的提携に向けた合意書に調印した。世界市場でのプレゼンスを強化するほか、業界が抱える課題に共同で取り組む考えで、「物流/交通に関わるソリューション調査」「既存・将来技術」「調達」などの分野で協力を検討することを取り決めていた。
今回の合意は両社が共同検討を通して出した成果の第一弾で、◇電動パワートレインと電動車の開発協業◇調達のシナジー効果を引き出すための合弁設立――を取り決めた。
トレイトンは大型商用車、日野は中型・小型商用車の分野に強く、両社は電動車・電動パワートレインの開発で相乗効果を見込んでいる。調達合弁は来年下半期の設立を目指す。
さらにVWは、トレイトンの形態をドイツ法に基づく株式会社(AG)からEU法に基づく欧州会社(SE)に変更することを決議した。トレイトンの新規株式公開(IPO)に向けた取り組みの一環で、年内にも変更手続きを完了する。
VWは4月、計12に上るブランドを大衆車、高級車、超高級車、商用車の4部門に再編したうえで、乗用車事業との関連が薄い商用車部門を有限会社から株式会社に改め、事業の拡大や強化に向けた資金を調達しやすくする方針を打ち出した。これを受けて商用車部門の社名を第3四半期に、フォルクスワーゲン・トラック・アンド・バス(VWTB)からトレイトン・グループへと変更した。
トレイトンのSE化はこれに続く措置。欧州会社の法形態を採用することで同社の国際的な性格を前面に押し出し、全世界的に事業を拡大しやすくする狙いがある。
トレイトンはMAN、スカニア、フォルクスワーゲン・カミーニョス・エ・オニブス(南米ブランド)、RIO(コネクテッドトラックシステム)の4ブランドで構成される。年内にSE化が完了することから、来年にもIPOを実施できる体制が整うことになる。IPOの具体的な時期については市場環境を踏まえ適切な時期に決定するとしている。
トレイトンとCNHTCはそれぞれのトラック子会社MAN、中国重汽を通じて2009年から協業関係にある。今回の合意では◇MANの中国市場向け大型トラックを開発するためにMANと中国重汽が合弁会社を設立する◇電動パワートレイン、電動車両、自動運転、バスの分野で技術協力の可能性を検討する◇シナジー効果の拡大を目指す――ことを取り決めた。中国の輸送需要拡大、排ガス規制強化、デジタル化に伴う課題に対応するのが狙いだとしている。
トレイトンはこれまで主に欧州と南米に限られていた商用車事業をグローバル化し、同分野で世界最大手となることを目指しており、2016年には米同業ナビスターと戦略提携合意した。16.6%出資している。中国重汽にもMANを通して25%プラス1株を出資するなど、グローバル化戦略を着々と進めてきた。同社は他社との協力とIPOによる市場資金調達を両輪に事業を加速・拡大していく考えだ。