仕事柄、出張を頻繁に行う社員は多い。では、出張時の移動時間に対する報酬はどのような基準で決めるべきなのだろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が17日の判決(5 AZR 553/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は建設会社の技術者が同社を相手取って起こしたもの。同技術者は国内外の建設現場に出向いて仕事することを労働契約で義務づけられていた。
同技術者は2015年8月10日から10月30日まで、中国の建設現場に出張した。往復の移動時間は計4日だった。
被告企業は原告の要請で、エコノミークラスの直行便でなく、中東ドバイ経由のビジネスクラスを手配した。報酬の対象となる移動時間は労働契約に基づき1日当たり8時間とし、32時間(8時間×4日)分の計1,149.44ユーロを支給した。これに対し原告は自宅と建設現場間の往復に要した計69時間が報酬対象になると主張。37時間分の追加支給を求めて提訴した。
原告は二審で敗訴したものの、最終審のBAGで部分勝訴を勝ち取った。判決理由でBAGの裁判官は、雇用主が被用者を国外に出張させるのはもっぱら自らの利益のためであるため、移動時間はすべて通常の勤務と同様に報酬支給の対象になると指摘。原則的にエコノミークラスでのフライトに要した移動時間が報酬対象になるとの判断を示した。
裁判官はそのうえで、原告が自らの希望でドバイに立ち寄ったことを指摘。これによって生じた追加の移動時間は報酬の対象にならないと言い渡した。つまり中国への移動に必要な時間のみが報酬の対象になるとの判断を示したわけである。
二審のラインラント・ファルツ州労働裁判所は審理のなかで中国出張の移動に必要な時間を明確化しなかったことから、BAGは最終決定を下せないとして、二審判決を破棄し同州労裁に裁判を差し戻した。同州労裁は所要の移動時間を調べたうえで、被告が原告に支払うべき報酬額を確定することになる。