BASFがTDI生産停止、ライン川の水位低下で原料不足に

独化学大手のBASFは26日、ルートヴィヒスハーフェン本社工場でトルエンジイソシアネート(TDI)の生産を停止すると発表した。ライン川の水位低下で、原料を確保できなくなったため。パイプライン、トラック、鉄道輸送を強化したものの、河川輸送の減少分を相殺できないことから、操業停止に追い込まれた格好だ。ライン川の水位が上昇するまで操業を再開できないとしている。

ドイツでは今年、年初から降水量が極めて少なく、平均降水量は毎月、平年を下回っている。11月に入ってやや雨が降ったものの、大幅に低下した河川の水位回復にはまったく足りない量だ。

大陸欧州では石油や石炭、化学製品の輸送に河川を利用している。物資を大量かつ安価に輸送できるためで、輸送費用はトラックの5分の1、鉄道の2分の1〜3分の1にとどまる。

河川輸送能力の低下を受けて素材系企業や発電会社はトラック、鉄道の利用を増やしているものの、そうした代替輸送には限界がある。

ライン川の輸送能力低下を受けてドイツ南部では石油が不足し、ガソリン、軽油、暖房油価格が上昇。ヘッセン、バーデン・ヴュルテンベルク、ラインラント・ファルツなど南部州ではすべに備蓄が取り崩されている。また、トラックを対象とする日曜・祝日の走行禁止が燃料タンク車では部分的に免除されている。

BASFは温暖化を背景に河川の水位低下が来年以降も起こりうると予想。パイプラインの増設や喫水線の低い輸送船の調達を検討している。ただ、ルートヴィヒスハーフェン工場では原料・製品の40%を河川で輸送しており、マルティン・ブルーダーミュラー社長は自社努力には限界があると指摘。水位の極端な低下を避けるために、必要に応じて河川をせき止めるインフラの構築を幅広く議論すべきだとの見解を示した。

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