バイエルが再編、動物薬事業は分離へ

独バイエルは11月29日、競争力強化計画を発表した。収益力の向上が狙いで、一部事業や製品を放出。動物薬部門については戦略的なオプションを検討する。これらの措置に伴い、従業員11万8,200人のうち約1万2,000人を整理する。

バイエルは米農業化学大手のモンサントを6月に買収した。買収金額は630億ドルと大きく、同社は巨額の有利子債務を抱え込んだ。また、モンサントの除草剤「グリフォサート」は発がん性の疑いを持たれており、バイエルは同社を買収したことで今後、巨額の引当金計上に追い込まれる可能性がある。

バイエルは一般医薬品部門の不振や特許薬部門の先行き懸念といった問題も抱えていることから、事業の見直しを求める投資家の圧力が高まっていた。

今回の計画はこれを受けてまとめたもので、動物薬部門を分離するほか、一般医薬品部門の一部の製品(日焼け止めクリーム「コパトーン」、フットケア剤「ドクター・ショール」)を売却する。また、化学工業団地運営会社クレンタの株式60%を放出する。

収益力の向上に向けては重複業務の削減や生産性の引き上げ、買収や提携を通した技術革新力の強化にも取り組む。

特許薬部門は現在、堅調を保っている。主力製品の販売が好調なためだ。ただ、今後は稼ぎ頭の製品の特許が相次いで失効することから、2020年代には同部門の売上高が60億ユーロ以上、目減りする恐れがある。同社が開発中の製品でその穴を埋めるのは不可能であるため、提携や買収を通して開発パイプラインを補充する。血友病薬分野では生産拠点を米バークリー工場に集約する。

一般医薬品部門では製品ポートフォリオ見直しのほか、組織再編にも取り組み、低迷する収益力を引き上げていく。

特許薬、一般医薬品部門では一部ブランドやのれん代の評価額を引き下げ、10~12月期に総額33億ユーロの評価損を計上する見通し。そのうち27億ユーロを一般医薬品部門が占める。

人員削減は21年末までに完了する。農業化学部門ではモンサントの統合に伴い4,100人が整理対象となる。人員削減コストは約44億ユーロに上る見通しだ。

同社はこれらの措置とモンサント買収のシナジー効果が22年以降、年26億ユーロに達すると見込んでいる。シナジー効果で得られた資金の一部は投資に回す。

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