フランス政府は5日、2019年1月に予定していた燃料税の引き上げを断念する方針を明らかにした。前日には増税を6カ月先送りすると発表していたが、依然として国民の反発が根強く、抗議デモに収束の見通しが立たないことから方針転換に追い込まれた。ただ、8日にも仏全土で抗議行動が展開されており、事態が鎮静化する兆しはない。
燃料増税はマクロン政権が掲げる地球温暖化対策の一環で、来年1月1日付けでガソリンと軽油の税率を引き上げる計画だった。しかし、マクロン政権は来年の予算案に大型の法人減税を盛り込むなど、これまで富裕層寄りと受け取られる政策を実行してきたため、低所得層を中心に反発が広がっていた。
8日のデモでは各地で商店の破壊や略奪が相次ぎ、治安部隊との衝突などで合わせて300人以上が負傷し、2,000人近くが拘束された。
一方、政権内では富裕税の再導入を検討する動きも出ている。政府は投資拡大の名目で、富裕税の課税対象を高額の不動産取引などに限定する政策を導入したが、グリボー報道官は5日のラジオ番組で、19年秋に富裕税を見直す可能性があると述べた。燃料税の引き上げ断念による税収減の穴埋めとして、有価証券などの保有資産に課税する従来の制度を復活させるというもの。大幅な歳入減で財政赤字がEUの定めるGDP比3%を超える事態を回避するための措置だ。欧米メディアによると、19年の歳入減は約40億ユーロに上るとされる。