ドイツ政府が二酸化炭素(CO2)排出削減目標の達成に向けてガソリン・軽油税の大幅引き上げや高速道路(アウトバーン)への速度制限導入を検討している。連邦交通省の諮問機関が作成した文書を元にロイター通信などが報じたもので、これらの政策が実施されると、エンジン車の需要は急速に低下する可能性がある。
ドイツは国内のCO2排出量を2030年までに1990年比で最低55%削減する目標を掲げている。ただ、現状ではこれを実現するのが難しいことから、踏み込んだ措置の実施が必要となっている。特に交通はCO2排出量が唯一、増加している部門であることから、風当たりが強い。
交通省はこれを受けて「移動の将来のための国家プラットホーム」という諮問委員会を設置した。自動車業界、労働組合、環境・交通団体、自治体の代表20人で構成される。
同委が作成した文書には、◇軽油の税優遇を廃止し2021年から税をガソリンと同額にする◇そのうえでガソリンと軽油の税額を23年に1リットル当たり3セント引上げ、その後も毎年1セント引き上げていく――ことが盛り込まれている。ガソリンと軽油の税額は30年に52セントへと上昇することになる。
文書にはまた、◇自動車税の額をもっぱらCO2排出量に基づいて決める新課税方式を導入する◇自動車メーカーに電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の最低販売比率を義務付ける(25年=25%、30年=50%)◇CO2排出量が多いトラックほど走行料金(マウト)が高い課金方式を導入し、同排出量が少ないトラックのマウトを最大75%引き下げる◇燃料消費量が特に多い自動車の購入者に数百ユーロの税を課す◇同税で得られる収入を電動車購入助成金の資金に充てる◇アウトバーンの走行速度を最大で時速130キロに制限する――といった政策案が盛り込まれている。
諮問委はこれらの措置により交通部門のCO2排出量を30年までに50%引き下げることができるとみている。3月末に最終文書を取りまとめる。政府は最終文書を参考に地球温暖化防止法案を策定し、年内に閣議決定する予定だ。同法案には交通以外の部門で実施するCO2排出削減策も盛り込まれる。