シーメンスとアルストムの鉄道事業統合を欧州委が不承認

欧州連合(EU)の欧州委員会は6日、独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手アルストムの鉄道事業統合計画を承認しないと発表した。同委は欧州精銅最大手の独アウルビスが圧延製品(FRP)部門を同業の独ヴィーラントヴェルケに売却する計画に対しても同日、不承認決定を下しており、寡占・独占による価格の上昇を防ぐ独禁当局として厳しい姿勢を示した格好だ。ただ、EU競争法に対してはグローバルレベルの競争が激化する現状に見合っていないとの批判があり、独仏政府の閣僚はEU競争法の改正に共同で取り組む意向を表明した。

シーメンスは2017年9月、鉄道事業を柱とするモビリティソリューション部門をアルストムと統合し、新会社シーメンス・アルストムをパリまたはその近郊に設立すると発表した。鉄道車両市場では中国国営2社の合併で誕生した中国中車(CRRC)が圧倒的なシェアを持つため、グローバル市場で対抗するためには欧州大手2社の統合が不可欠と説明した。

これに対して欧州委は昨年7月、鉄道車両世界2位と同3位の統合が実現すると、欧州では統合新会社のシェアが2位以下の3倍に達するほか、信号システムの分野でも市場独占に近い状況が生まれると指摘し、本格調査に着手。10月末には両社の統合によって域内の鉄道市場で公正な競争が阻害され、価格やサービス面で消費者に悪影響を与える可能性があるとして、シーメンスとアルストムに異議告知書を送付し、12月半ばまでに改善策を示すよう求めた。

これを受けて両社は12月に改善案を提示したが、欧州委は信号システムと高速鉄道車両市場で競争が鈍化するとの疑念を払しょくするのに十分でないとして、不承認を決めた。CRRCは売上高が約300億ユーロで、シーメンスとアルストムの鉄道事業の合計の2倍に上るものの、同委はCRRCが欧州を含む世界の高速鉄道市場でシーメンス、アルストムに競争圧力を加える可能性は当面ないと断定。CRRCに対抗するために鉄道事業を統合することが必要不可欠とする独仏両社の主張を退けた。

一方、フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務相は、欧州委はシーメンスとアルストムの計画を承認するという方向でEU競争法を解釈することもできたはずだとして、同委を批判した。今回の決定はCRRCなど世界の競合を利するだけだとしている。

現行のEU競争法については「時代遅れだ」との認識を示し、ドイツ政府とともに改正を検討する意向を表明した。ドイツのペーター・アルトマイヤー経済相も、欧州競争法を時代に見合ったものへと改めるために独仏共同の取り組みを準備すると述べており、両国はグローバル競争を踏まえた方向へとEU競争法を改正する意向だ。

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