欧州委員会は18日、独化学大手のBASFがベルギーの同業ソルベイのポリアミド(ナイロン樹脂)事業を買収する計画を条件付きで承認したと発表した。「ナイロン6.6」と呼ばれる合成繊維などの分野で公正な競争を維持するため、ソルベイの生産拠点4カ所を売却することなどが条件となる。
BASFは2017年9月、ソルベイのポリアミド事業を16億ユーロで買収することで合意した。ポリアミドは耐熱性や強度の高い工業用樹脂(エンジニアリングプラスチック)の一種で、自動車部品などに使われる。BASFは需要増が見込まれるポリアミド事業を拡充し、自動車や電器産業向けの材料分野でサプライヤーとしての競争力を強化すると説明していた。
しかし、欧州委はBASFとソルベイの取引を認めた場合、ポリアミドの主要原材料となるアジポニトリル(ADN)などの調達で顧客企業の選択肢が減り、価格上昇を招く恐れがあると判断。初期調査での承認を見送り、昨年6月から本格調査を進めていた。
BASFは欧州委の懸念に対応するため、フランス、ポーランド、スペインにあるソルベイの生産拠点4カ所を単一企業に売却したうえで、新生BASFと売却先との間でフランス南部シャランペに合弁会社を設立し、ナイロン6.6の合成原料となるアジピン酸を共同で生産することを提案。また、必要に応じて売却先との間でADNの長期供給契約を結ぶことも改善策に盛り込んだ。
欧州委は一連の措置を通じて競争上の懸念は払しょくされると判断し、BASFが生産拠点の売却などを実行することを条件にソルベイとの取引を承認した。