米通商代表部(USTR)は11日、EUとの通商協議に向けた交渉目的を発表し、米国産の農産品についてEU市場への包括的なアクセスを求める方針を打ち出した。EUと米国は農業分野を交渉に含めないことで合意していたが、米国内では農産品も含めた包括的な協議を求める声が高まっていた。
USTRはEU側に米国の農産品に対する関税の引き下げや廃止、非関税障壁の撤廃を求め、「包括的な市場アクセスを確保する」と表明している。米国が農業分野の協議を正式に求めたのは今回が初めて。USTRが交渉目的を公表したことで、米側では今後30日以内に交渉を開始できる条件が整った。ただ、EU側でも加盟国から交渉開始の同意を得る必要があり、農業分野の協議をめぐって調整が難航する可能性もある。
欧州委のユンケル委員長とトランプ米大統領は昨年7月の首脳会議で、「自動車を除く工業製品の関税撤廃」に向けて交渉を開始することで合意。農産品についてはEU内で反対意見が根強いため、当面は交渉の対象から除外する代わりに、EU側が大豆の輸入拡大に応じることで合意した。欧州委のマルムストローム委員(通商担当)は9日にワシントンでUSTRのライトハイザー代表との会談に臨む際、「EU側からは農業分野について議論するつもりがないこと明確にしている」と述べていた。
一方、EUが求めていた自動車についての協議は交渉目的に盛り込まれていない。USTRはこのほかEU側に対し、ソフトウエア、映画、音楽などのダウンロードに関税を課さないことや、国境をまたいだデータ流通を制限したり、データのローカライズを義務付ける規制を導入しないとの確約を求める方針を示している。