日立が英原発計画を凍結、英政府との協議は継続

日立製作所は17日、英国で進めている原子力発電所の建設計画を凍結すると発表した。原発の安全基準強化に伴うコスト増などで事業費が膨らむ中、資金の出し手を確保できず、英政府の支援拡大も見込めないことから、損失の拡大を防ぐため計画を凍結する。日立は英政府との協議を継続して事業再開の可能性を探る方針だが、原発事業の売却や撤退も視野に入れている。計画凍結による日立の損失は3,000億円に上る見通しだ。

日立は2012年に英ホライズン・ニュークリア・パワーを買収して英国での原発事業に参入。ウェールズ北西部アングルシー島に原発2基を建設し、2020年代前半の運転開始を目指していた。およそ9,000人が原発建設に従事し、稼働時には新たに850人の雇用が創出される見通しだった。

しかし、太陽光や風力など再生可能エネルギーの浸透で発電コストが下落し、英政府が日立に提示した電気の買い取り価格は当初の想定を大幅に下回った。採算性への懸念が強まる中、日立は英政府に支援を要請。総事業費3兆円のうち2兆円を政府が融資し、残り1兆円を日立と日英の企業などの出資で賄う計画だった。

クラーク民間企業・エネルギー・産業戦略相は英議会下院で日立の決定について説明し、資金調達方法などについて日立との協議を継続する方針を示した。クラーク氏は「原子力は引き続き重要なエネルギー源だ」と強調。そのうえで再生可能エネルギーの浸透や原発の安全基準強化によるコスト増などに触れ、「民間企業から出資協力を得ることが極めて困難になっている」と指摘。将来に向けて原発のあり方を慎重に見極める必要があるとの認識を示した。

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