ロシア、中央アジアでの影響力維持に腐心

ロシアのラブロフ外相は今月初め、中央アジア各国を訪問した。同相の訪問は3月初めに予定されるプーチン大統領の中央アジア歴訪への地ならしとなるものだが、その成否は不透明なものとなっている。ロシアは同地域の国々に対する影響力を維持しようとしているが、資金が不足しているため関与は十分とはいえず、自らの裏庭と考える同地域への経済的影響力は低下する一方だ。

昨年のロシアの中央アジア政策の中心はウズベキスタンだった。プーチン大統領による同年10月の訪問では270億ドルに上る取引が成立した。しかしウズベキスタン以外の国に対するロシアの投資、経済支援及び安全保障上の関与はいずれも中途半端で、影響力を維持するには十分ではない。

ラブロフ外相は今回、キルギスタンが水力発電所建設プロジェクトへのロシアの関与を歓迎していると述べ、キルギスタン側もロシアの投資に対する強い関心を表明した。しかし同国でのプロジェクトへのロシアの関与はしばしばその限界を示している。例として、2012年に電力大手インターRAO UESは事業規模20億ドルのカムバル・アタ(Kambar-Ata)水力発電所建設プロジェクトに参加した。また、水力発電最大手のルスヒドロも同年、ナリン川上流における水力発電所建設に関する契約を結んだ。しかし経済危機を背景に、2015年に両計画は延期が決定されてしまった。

タジキスタン訪問では安全保障が大きな課題となった。同相は2,000人余りのタジキスタン軍人がロシアで訓練を受けたほか、さらに600名がロシアの国防大学の授業に参加していると述べた。

安全保障に関してロシアは、中央アジアにおけるアフガニスタンからの脅威を常にあおってきた。最近では1月末に、ズボフ内務副大臣がイスラム国の兵士がヘリコプターでパキスタン側からタジキスタンとの国境沿いに大量に輸送されたと述べたが、タジキスタンの国境警備隊はそれを否定している。

ロシア側のこうした言動はタジキスタンで軍事的プレゼンスを長期にわたり維持しようとする意思の表れだ。駐留する軍に加えイスカンダルM型短距離弾道ミサイルの配備で同地域に軍事力を投射する能力が強まった。しかしタジキスタンとの二国間経済協力の内容にめぼしいものはなかった。

今回の中央アジア訪問で成果の乏しさが特に際立ったのはトルクメニスタンだった。公式声明には中身が伴っていなかった。ラブロフ外相は、トルクメニスタンは2017年に両国間で合意された戦略パートナーシップを実施する強い意向を持っていると話したが、トルクメニスタンのメレドフ外相はロシアとの多面的な結びつきを拡大したと述べるにとどまった。

トルクメニスタンが必要としているのは資金である。しかしロシア国営ガスプロムは2016年に同国産の天然ガスの購入を中止している。ラブロフ外相の今回の訪問を見る限り今後の進展は余り期待できそうにない。

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