独車3社カルテル法違反を欧州委が暫定認定

欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、独自動車大手BMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン・グループ(VW、アウディ、ポルシェ)が長年に渡って違法なカルテルを結んでいたとの暫定見解(異議告知書)を3社に送付したことを明らかにした。カルテルは製品技術に関するもので、価格や市場分割などを取り決めたものでないものの、最も優れた技術の搭載車を、不当な申し合わせを通して消費者が購入できないようにしたことはEUと欧州経済領域(EEA)の独禁規制に抵触すると批判している。

欧州委によると、3社のカルテルは(1)ディーゼル車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するために用いるアドブルー(尿素水溶液)のタンク(2)ガソリン直噴車が排出する粒子状物質(PM)を浄化するガソリン微粒子捕集フィルター(GPF)――の2分野で行われていた。

(1)のカルテルは2006年から14年に渡るもので、アドブルーのタンク容量を小さくすることを取り決めていた。同委によると、容量を小さくしたのは、大きいとコストがかさむため。

(2)はGPFの投入を回避ないし先送りする目的で09年から14年にかけて行われていた。昨年7月のメディア報道によると、3社はEUがガソリン車のPM排出基準を厳格化する時期を可能な限り先送りするよう、ロビー団体を通して働きかけることも取り決めていたもようだ。

EUのPM規制をみると、ディーゼル車では1992年7月に導入された「ユーロ1」の段階で走行1キロメートル当たりの排出許容上限を140ミリグラムに設定。同許容値はその後、厳格化されていき、09年9月導入の「ユーロ5a」では5ミリグラムへと引き下げられた。

一方、ガソリン車では「ユーロ4」までPM規制が適用されず、ユーロ5aで初めて適用された(対象は直噴エンジン車のみ)。ガソリン車のPM規制導入時期がディーゼル車よりも遅くなった背景に、独3社の委託を受けたロビー団体の活動があった可能性を排除できなくなっている。

欧州委は声明で、3社は排ガス浄化システム分野の技術革新競争を制限することで、環境により優しい車両購入の可能性を消費者から奪ったとの暫定見解を表明。この見解が正しいことが確定すれば、3社の行為はカルテル法に違反していたことになるとの認識を示した。

BMWは引当金10億ユーロ

EUのルールでは、最終的に違法性が認定された企業は全世界の売上高の最大10%に相当する制裁金の支払いを命じられる可能性がある。ダイムラーはカルテルを認めて欧州委に最初に通報し、調査に協力しており、制裁を全額免除される見込み。VWも調査に協力しており、減額を期待できる。

一方、BMWは同日付の声明で、欧州委の見解に反論した。具体的には◇3社の協議は排ガス処理技術の改良を目指したものであり、顧客にもサプライヤーにも被害をもたらすものではない◇アドブルーのタンク容量を小さくしたのは小型車にも速やかに搭載できるようにすることが目的だ◇BMWのディーゼル車排ガス処理技術は競合のものと大きく異なっており、3社の協議により技術革新競争は制限されていない◇GPFに関する協議は同フィルターの一律採用が義務化されることを回避し、EUが導入を目指していたガソリン車のPM規制値を遵守する手段としてGPF以外の技術も導入できるようにすることを意図したものだ――としている。欧州委の見解を全面的に否認する内容であるため、同委が制裁金支払いを命令した場合は裁判で争う可能性が高い。

ただ、同社はその一方で、引当金10億ユーロ以上を1-3月期に計上する見通しを明らかにした。違法性を認めていないものの、欧州委が制裁金支払いを命じるのはほぼ確実と判断。国際財務基準に従い積み立てを行う。自動車部門の19年12月期の売上高営業利益率(EBITベース)は当初予定の6~8%を1~1.5ポイント下回る見通しだ。

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