スイス複合企業モンタナ・テック・コンポーネンツの独電池製造子会社ファルタは29日、米競合エナジャイザー・ホールディングスから欧州家庭用電池子会社ファルタ・コンシューマー・バッテリーズを取得することで合意したと発表した。これにより乾電池など家庭用製品事業への再参入を果たすとともに、小売店向けの販売チャンネルを獲得する。ファルタとファルタ・コンシューマーはもともと同一企業であり、ファルタは買い戻す格好となる。
実質買収価格は約1億ユーロとなる見通し。最終的な買収価格は取引完了時点で確定する。ファルタは相場を大幅に下回る価格で取得することを明らかにした。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が投資銀行家の情報として報じたところによると、電池業界では買収金額が通常、営業利益の10倍に上る。ファルタ・コンシューマーの直近の営業利益は3,000万ユーロであるため、ファルタはわずか3倍強で取得することになる。取引の成立には欧州連合(EU)欧州委員会の承認が必要で、ファルタは今年下半期の買収手続き完了を見込んでいる。
ファルタ・コンシューマーは西南ドイツのエルヴァンゲン市に本社を置く企業で、同市と近辺のディッシンゲンに工場を持つ。20カ国以上に販売会社を持ち、ドイツ、オーストリア、スイス市場では乾電池など家庭用電池分野の最大手となっている。今年は売上高で約3億ユーロを見込む。
ファルタは1887年創業の老舗企業。2002年にオーナー(当時)のクヴァント家(BMWの大株主)が自動車バッテリー事業を米ジョンソン・コントロールズ、家庭用電池事業を米レイオバック(現スペクトラム・ブランズ)にそれぞれ売却した。モンタナはマイクロバッテリー事業を06年にファルタから取得し、11年にはファルタ本体も買収した。
ファルタは現在、補聴器などに用いるマイクロバッテリーの製造子会社ファルタ・マイクロバッテリーと、太陽電池用蓄電池を手がける子会社ファルタ・ストレージの2社を傘下に持つ。ファルタ・コンシューマーを傘下に収めると、売上高は6億ユーロ強、営業利益(EBITDA)は1億ユーロ強に拡大する。
エナジャイザーは今年初、スペクトラムの電池事業を買収した。その際、ファルタ・コンシューマーの放出を欧州委員会から義務づけられていたことから、今回の取引に踏み切った。アメリカ大陸とアジアでは今後、小売店向け事業で「ファルタ」ブランドをライセンス使用する。