ドイツの世帯が保有する純資産(名目資産から債務を除いた金額)が2017年は平均23万2,800ユーロとなり、前回調査の14年に比べ9%増加したことが、連邦銀行(中銀)の調査で分かった。賃金の上昇を背景とする収入増のほか、不動産価格と株価の上昇で水準が押し上げられた格好だ。
中央値(数値を小さい順に並べた時、中央に位置する値)は14年比で17%増加した。ただ、額は7万800ユーロと平均値の3分の1にとどまる。平均値が中央値を大幅に上回るのは、富裕層が水準を押し上げているためで、最も裕福な10%の層が保有する資産は全体の55%を占めた。これらの層が保有する資産は平均130万ユーロに上る。
所得分配の不平等さを測る指標であるジニ係数(格差の全くない完全に平等な社会が0%、富を1人が独占する完全に不平等な社会が100%)は74%となり、前回を2ポイント下回ったものの、依然として高い。ユーロ圏平均は68.5%(14年)にとどまる。
持ち家世帯の割合は44%にとどまった。これらの世帯のほとんどは資産の規模別分布で上位50%以内に入り、下位50%は借家世帯が大半を占める。
不動産と株価上昇の恩恵を受けたのは上位50%の世帯だ。下位50%の世帯は賃金上昇で貯蓄を増やすとともに、新規債務を減らすことができたことから、純資産が拡大した。
純資産の中央値を地域別でみると、西部(旧西ドイツ)で12万3,300ユーロに達したのに対し、東部(旧東ドイツ)は2万6,700ユーロにとどまった。東部は1990年のドイツ統一まで社会主義国であり、住宅を所有する世帯がほとんどなかったことから、持ち家世帯が現在も少ない。
純資産の中央値を国際比較でみると、隣国オーストリアは8万3,000ユーロ(17年)、米国は8万8,000ユーロ(16年)、イタリアは12万6,000ユーロ(16年)とドイツを上回った。ドイツの額が低いのは◇不動産保有世帯の割合が低い◇公的年金が充実しているため老後資金の積立額が比較的小さい――ため。不動産の保有世帯とそれ以外の世帯では一般的に、資産に大きな開きが出るという事情がある。
年金請求権を加味するとドイツの資産格差は大幅に低下する。Ifo経済研究所が昨年公開した調査によると、同請求権加味後のジニ係数は51%で、加味前の73%を22ポイントも下回っている。