育児休暇を取得し全く仕事をしていない被用者がその期間中にパートタイムで仕事を再開したいと申請するケースがある。一定の前提条件を満たしていれば、雇用主がこれを拒否することは原則的にできないのであるが、育児休暇法(BEEG)15条1項第4には、経営上の理由がある場合は拒否できると明記されている。この規定に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年12月の判決(訴訟番号:9 AZR 298/18)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。
裁判は2015年4から17年4月まで育休休暇を取得した経理部門の被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。労働契約上の勤務時間は週37.5時間となっていた。
原告は育休中の16年7月8日付の文書で、11月1日から週20時間労働で勤務を再開することを被告の雇用主に申請した。これに対し被告は、◇原告の業務は育休期間が終了するまで代用社員が行うことになっている◇人手を増やす必要もない――として拒否した。
その後、原告と同じ業務を行う社員が退職届を提出したことから、原告は8月1日付の文書で再びパートタイムによる勤務の再開を申請したものの、雇用主は再び拒否。代わりに賃金の低い業務でのパート勤務を原告に打診した。
原告はこれを拒否したうえで、自らのパート申請を受け入れるよう要求して提訴した。
被告企業では原告の育休中に業務の見直しを行った結果、経理部門の業務が削減されていた。このため、原告に任せる業務はなかった。つまり、パートタイムによる仕事の再開を拒否する正当な理由があったわけである。被告はこの事実を裁判審理のなかで初めて明らかにした。
原告は一審で勝訴したものの、二審で敗訴。最終審のBAGでは逆転勝訴した。判決理由でBAGの裁判官は、業務見直しの結果、原告に任せる業務がない事情を被告は原告への回答文書のなかで伝えなければならなかったと指摘。被告は裁判のなかで初めて明らかにしており、効力は失われており無効だと言い渡した。
裁判官は二審での審理が十分に行われていなかったとして、裁判を差し戻した。