新社員採用時の事業所委の同意で最高裁判断

雇用主は新社員の採用前に、被用者の社内代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)にその情報を文書で通知したうえで、同意を取り付けなければならない。これは事業所体制法(BetrVG)99条1項に記されたルールである。事業所委は同意を拒否する場合、通知を受けてから1週間以内にその旨を文書で回答しなければならない。これは同条3項に記された規定であり、1週間以内に拒否回答しない場合は同意したものとみなされる。

一方BetrVG105条には、雇用主が管理職を新規採用する場合は事業所委の同意を得る必要はなく、採用する意向を事前に伝えるだけでよい、と記されている。このため、事業所委の同意が必要となるのは非管理職を新規採用する場合に限られる。

このBetrVG99条と105条に絡んだ係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が昨年11月の決定(訴訟番号:7 ABR 16/17)で判断を示したので、ここで取り上げてみる。

裁判はドイツ全国に計14拠点を展開する企業を相手取って事業所委員会が起こしたもの。同社は2015年10月1日付で、M氏をE支店の店長として採用した。管理職としての採用だったため、事業所委に対しては事前通知するにとどめ、同意を取り付けなかった。

事業所委は実際に勤務を開始したM氏に支店長の資格がないと判断。同氏の雇用契約破棄を求めて裁判を起こした。

これを受けて被告企業は、BetrVG99条1項に基づく事業所委からの同意獲得手続きを念のために実施。M氏を15年10月1日にさかのぼって「支店長として」採用する意向を16年2月22日付の文書で伝えた。これに対し同委は、M氏を依然として支店長として採用するとしていることを問題視し、25日付の文書で受け入れ拒否の回答を行った。

被告は事業所委の同回答について、妥当な根拠がないと裁判で主張。この主張を根拠に、事業所委員会が1週間以内に拒否回答しない場合は採用計画に同意したものとみなされるとしたBetrVG99条3項の規定が適用されると訴えた。

原告の事業所委員会は二審で逆転敗訴したものの、最終審のBAGで逆転勝訴した。決定理由でBAGの裁判官はまず、M氏の支店長採用を無効とした一審決定を認め、M氏の採用はBetrVG99条1項に基づき事業所委の同意が必要だと指摘した。

そのうえで、BetrVG99条1項は(1)採用計画を当該被用者の「採用前」に事業所委に通知する(2)当該被用者を管理職でなく一般社員として採用する考えを明確に伝える――ことを雇用主に義務づけていると指摘。(1)に関しては通知が事後であること、(2)に関しても「支店長(管理職)として」採用する意向を伝えていることを示し、M氏採用の事後承認を求めた被告の文書の無効性を明らかにした。

M氏採用の事後承認を求めた被告の文書自体が無効となったことから、事業所委員会が1週間以内に拒否回答しない場合は採用計画に同意したものとみなされるとした被告の主張も根拠がなくなったことになる。

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