欧州連合(EU)加盟国は10日開いた大使級会合で、工業製品の関税撤廃を目指す米国の通商交渉の開始に向け、欧州委員会に交渉権限を付与することで合意した。米国が地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」から離脱した点を問題視するフランスが難色を示していたが、ようやく交渉入りの道筋がついた。早ければ15日の農相理事会で正式な承認が得られる見通しだ。
欧州委員会のユンケル委員長とトランプ米大統領は昨年7月の首脳会議で、自動車を除く工業製品の関税撤廃に向けて交渉を開始し、その間は米国がEUからの輸入自動車に対する追加関税の発動を見合わせることで合意した。農産品についてはEU内で反対意見が根強いため、当面は交渉の対象から除外する代わりに、EU側が米国産大豆の輸入拡大に応じることで合意。双方は高官級の作業部会を立ち上げて交渉入りの準備を進めているが、米国内では農業分野も含めた包括的な協議を求める声が高まっており、調整が難航している。
こうした中で欧州委は1月に交渉権限の付与を求める草案をまとめ、欧州議会と加盟国で交渉開始の条件などをめぐり協議が続いていた。欧米メディアによると、大部分の加盟国が草案を支持する中、フランスは農産品を交渉対象から除外することには合意したものの、パリ協定から離脱した米国と新たな通商交渉に入ることに強く反対。5月の欧州議会選挙後まで結論を先送りするよう求めていたが、最終的に合意形成の遅れに苛立ちを見せる米側に配慮したとみられる。
ただ、トランプ氏は9日、EUによるエアバスへの補助金が不当だと主張し、110億ドル相当のEU製品に報復関税を課すとツイッターに投稿した。これを受けて欧州委のマルムストローム委員も、米政府も米ボーイングに補助金を与えていると指摘。米側が関税を発動した場合、EUも同様の対抗措置を講じると発言しており、新たな通商交渉の行方は予断を許さない。