欧州連合(EU)は9日、議長国ルーマニアのシビウで英国を除く27カ国による非公式首脳会議を開き、英国の離脱後も加盟国が結束を維持することなどを掲げた「シビウ宣言」を採択した。今月23日からの欧州議会選挙では、EUに懐疑的な大衆迎合主義(ポピュリズム)政党の躍進が見込まれる中、加盟国が意見や立場の相違を乗り越えて連携を強化する姿勢をアピールした。
ポーランドやハンガリーでEUの基本的な価値観とは相容れない強権的な政策が推し進められている現状を踏まえ、宣言には民主主義や法の支配など基本的価値の遵守、経済面の格差是正など公正原則の維持など10項目を列挙。ルールに基づいて国際社会の「責任あるリーダー」として行動すると表明し、将来にわたる結束の維持を確認した。
EUではユンケル委員長率いる欧州委員会が10月末に5年間の任期を終える。首脳らは新体制で臨む今後5年間に取り組むべき課題についても議論を開始。テロ対策やサーバー攻撃への対応、移民政策、税制調和、気候変動対策などを重点課題とする方針で一致した。トゥスクEU大統領は会議後、ユンケル欧州委員長の後任を含めた主要ポストの人選を進めるため、欧州議会選後の28日に臨時の首脳会議を招集して必要な手続きを開始する方針を明らかにした。
一方、EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表と英独仏の外相は9日、イランのロウハニ大統領が8日、2015年に結んだ核合意の一部履行停止を表明したことを受けて共同声明を発表し、「いかなる最後通告にも応じない」と宣言した。EUと3カ国はロウハニ氏が60日以内に関係国との協議に進展がない場合、ウラン濃縮の濃度の上限を引き上げると警告したことを強く非難。核合意の維持に努める考えを改めて示したうえで、イラン側にも「合意の完全な履行を求める」と表明した。