英が温室効果ガス「実質ゼロ」目標に、50年までの達成目指す

英政府は11日、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにするとの目標を発表した。英国は08年制定の「気候変動法」に基づき、50年までに1990年比で80%削減するとの長期目標を掲げてきたが、20年以降の温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」の適用開始を控え、同法を改正して地球温暖化に対する取り組みを加速させる。

英政府によると、より野心的な削減目標を掲げた気候変動法の改正が実現すると、英国は先進7カ国(G7)で初めて温暖化ガス排出量の実質ゼロを法律で定める国となる。メイ首相は「野心的な目標だが、地球と将来の世代を守るために達成しなければならない。世界が自然資源や環境に配慮したクリーンかつグリーンな成長を遂げるため、われわれが率先して行動する必要がある」と強調した。クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相も英国が環境戦略を主導する必要性を訴え、クリーン技術を主要産業に育てることで経済の活性化を図ることができると述べた。

一方、政府は野心的な目標のために自国企業が競争で不利な立場に置かれることがないよう、他の主要国が今後どのような政策を打ち出すか見極めながら、5年以内に目標の見直しを行う方針を示している。欧州ではマクロン仏大統領が2年前、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする方針を表明。メルケル独首相も先月、50年までに実質ゼロにするための議論を始めると表明している。

英政府の諮問機関である気候変動委員会(CCC)は5月、長期的な温室効果ガス削減目標関する報告書をまとめ、50年までの実質ゼロを目指すべきだと提言した。技術開発により、電気自動車(EV)用のバッテリーなど環境負荷を減らすためのコストが大幅に減少したことを理由に、排出削減目標を引き上げても経済的な負担はこれまでと変わらないと指摘。野心的な目標は「達成可能」と強調していた。

上部へスクロール