伊への赤字是正手続き発動、欧州委が見送り

欧州委員会は3日、イタリアへの過剰赤字是正手続き発動を見送ると発表した。伊政府が2019年予算の見直しに応じたことを評価し、現時点での手続き発動は必要ないと判断した。ただ、累積債務は高水準にあることから財政状況の監視を続ける。

イタリアの累積債務はユーロ圏でギリシャに次ぐ高水準。18年は国内総生産(GDP)比で132.2%に達し、EUの財政規律で上限となっている60%を大きく超えている。

欧州委員会は5月に公表した四半期経済見通しで、イタリアでは経済成長が低迷する中、すでに膨れ上がっている債務が一段と拡大する恐れがあると指摘。イタリア政府が改善に動かなければ、過剰赤字是正手続きを発動する構えを示していた。

これに対して伊政府は、手続き発動を回避するため、2019年予算の見直しを1日に閣議決定し、欧州委に財政健全化への取組みをアピールしていた。

閣議決定された予算修正は、歳出減や税収増により19年の財政赤字を4月に打ち出した目標より76億ユーロ圧縮するという内容。これによって19年の財政赤字は当初想定していたGDP比2.4%から2.04%に縮小する。

欧州委が問題視しているのは累積債務で、19年の財政赤字を数パーセント削減しても、同問題の抜本的改善にはつながらない。それでも欧州委は努力を評価し、赤字是正手続き発動を見合わせることを決めた。イタリア国内の反EU勢力が一層台頭するのを防ぎたいという思惑もあるもようだ。

欧州委は伊政府に20年予算案でも財政健全化を進めるよう求めている。10月15日までに提出される予算案を精査した上で、問題があると判断すれば再び是正手続きに着手することになる。

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