香港取引所は11日、ロンドン証券取引所(LSE)グループに買収を提案したと発表した。296億ポンド(約3兆9400億円)で全株式を取得し、合併する。アジアと欧州の代表格である両取引所の統合による効果を強調しているが、LSEは13日に拒否を表明しており、実現は難しそうだ。
買収は現金支払いと株式交換を組み合わせた形で実施する。LSEの株主は1株につき現金20.45ポンドと香港取引所の新株2.495株を受け取る。買い取り価格は10日の終値に22.9%を上乗せした水準だ。LSEが抱える債務の引き受けを含めた買収額は316億ポンドとなる。
LSEは8月、金融情報やリスク管理などのサービスを提供するリフィニティブを270億ドルで買収することで合意したばかり。香港取引所の買収案は、同取引の中止が条件となっている。
香港取引所のLSE買収には、事業拡大によって米CMEグループなど強力なライバルに対抗できる体制を強化する狙いがある。英国のEU離脱をめぐる混迷でポンド安が進行しているため、割安で買収できることも背景にある。
しかし、LSEはリフィニティブ買収で情報サービス部門を大きく強化できることから、その中止を条件とする買収案に反発。香港取引所の大株主が香港政府で、買収が実現するとLSEが間接的に中国政府の影響下に置かれることや、香港での民主派によるデモの激化、英、米などの当局などが合併を認めない可能性があることにも触れ、取締役会が「戦略的なメリットがない」として全会一致で拒否を決めたことを明らかにした。話し合いに応じない姿勢も示した。
これに対して香港取引所は13日、拒否に「失望した」とした上で、LSE株主に働きかけ、買収実現を目指す意向を表明した。
LSEをめぐっては、ドイツ取引所との統合計画が3度浮上したが、政府やEU当局の反対で実現しなかった経緯がある。