ドイツには高齢就労者パートタイム(Altersteilzeit)という制度がある。年齢の高い被用者の労働時間を半減するというもので、企業の人員削減の際によく利用される。被用者の側から適用を申請することもできる。
同制度の利用方法は大きく分けて2種類ある。1つはパートタイムの全期間を通して、日々の労働時間を半減するもので「均等配分モデル(Gleichverteilungsmodell)」と呼ばれる。もう1つは「ブロックモデル(Blockmodell)」というもので、パート期間の前半はこれまで通りフルタイムで勤務。後半は給与の支給を受けるものの勤務を全面的に免除され、事実上の退職生活に入る。ほとんどの企業はブロックモデルを採用する。
ではブロックモデルで事実上の退職生活に入り、業務を行っていない被用者には年次有給休暇の取得権があるのだろうか。この問題を巡る係争で雇用問題の最高裁である連邦労働裁判所(BAG)が9月24日に判決(訴訟番号:9
AZR
481/18)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は高齢就労者パートタイムを利用した被用者が雇用主を相手取って起こしたもの。同被用者は雇用主と契約を結び、高齢者パートタイムを◇2014年12月1日~17年7月31日の2年8カ月(計32カ月)とする◇ブロックモデルを採用して同期間の前半に当たる16年3月31日までは従来通り、週40時間のフルタイムで働き、後半の同4月1日~17年7月末は勤務を全面的に免除される――ことを取り決めた。
原告の15年の年次有給休暇はそれまでと同じ30日だったが、高齢者パートタイムの勤務期間から勤務免除期間へと移行する16年は8日に削減され、17年は0日となった。被告雇用主は原告が実際に行った勤務の日数に応じて有給休暇を与えたのである。
原告はこれを不当と批判。16年と17年の有給休暇、合わせて52日分(16年:30-8=22日、17年=30日)を金銭に換算して支給するよう求めて提訴した。
一審と二審は原告の訴えを棄却。原告はこれを不服として上告したものの、最終審のBAGでも敗訴した。判決理由でBAGの裁判官は、年次有給休暇の日数を最低24日とするとした有給休暇法(BUrlG)3条1項の規定を挙げたうえで、これは週6日勤務を前提にしており、週1日の勤務で年4日の有給が与えられると指摘。勤務義務のない勤務免除期間の被用者には有給休暇の請求権がないと言い渡した。