ポーランドで13日実施された下院選挙(定員460)は、欧州連合(EU)懐疑派の与党・法と正義(PiS)が野党に大差をつけて勝利した。2015年の前回選挙よりも得票を伸ばし、単独過半数を維持しただけでなく、議席を増やす見通しとなった。EUは政治基盤を強化したPiS政権と対峙することとなり、摩擦が続きそうだ。
選挙管理委員会が開票率99.5%の段階で発表した各政党の得票率は、PiSが43.8%となり、前回選挙を6.2ポイントも上回った。中道右派の市民プラットホーム(PO)など3党から成る選挙連合「市民連合(KO)」は2位につけたものの27.2%にとどまった。このほか、左派連合「レヴィツァ」が12.5%、右派・農民党(PSL)が8.6%、極右・自由独立連合が6.8%を獲得して議席を得る見通しだ。投票率は55.3%と、前回の50.9%を大きく上回った。
報道の自由の制限や司法の中立性を損なう改革で、国外からは強く批判されているPiS政権だが、有権者は「福祉国家」の実現や力強い経済成長、賃金上昇といった「実利」を高く評価したもようだ。福祉策として実施された子育て世帯援助(子ども1人当たり月500ズロチ=約115ユーロを支給)は、PiSの票田となっている地方の低所得者層だけでなく、非支持者の間でも評判が良い。POは15年の選挙戦当時、同支援策を「財政破綻につながる」と批判していたが、導入後も財政が破綻せず好景気が続いたことで信用を喪失した。今回の選挙戦でも「PiSを批判するだけで独自の策を打ち出さない」という有権者の声が出ている。
ただ、今回の選挙結果で、ポーランド人の多数派がPiSと価値観を共有していると判断するのは尚早だ。欧州シンクタンク・欧州国際関係評議会(ECFR)の調べによると、ポーランド人の多数派は、欧州政策やトランプ米大統領、財政、堕(だ)胎、性的少数者(LGBT)の権利などについて、PiSと意見が異なるという。
ECFRはPiSの社会福祉策について「現金支給に偏り、公的サービスは質が低下している」と指摘する。教育・医療改革では支出削減を目指すあまり、教師や医師の不足が深刻化。医療面では、治療の一部を保険適用から外して自己負担化するなど、ひずみが出ている。
PiS政権の今後を占うには、社会福祉への巨額の支出をいつまで続けていけるのかに加え、公的サービスがどれだけ機能していくか、といった点にも注目する必要がありそうだ。(1PLN=27.71JPY)