製薬・農薬大手の独バイエル(レバークーゼン)は10日、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」実現に向けた同社の長期計画を発表した。人権や環境への配慮を求める圧力が政治や社会のほか、経済界内でも高まっていることに対応する狙い。二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出量を差し引きでゼロにする「カーボンニュートラル」については2030年までに実現する意向だ。
SDGsは15年9月の国連総会で採択された国際社会共通の目標で、貧困や飢餓の撲滅、男女平等、温暖化防止など計17の目標を30年までに実現することを目指している。
バイエルはこれを踏まえて30年までに達成すべき同社独自のSDGs目標を策定した。飢餓や健康・男女平等などの分野では◇低中所得国の小規模な農業従事者1億人に最新の技術や知識を提供することを通して、食料品の地域的な自給を実現するとともに、農村地域の貧困を改善する◇低中所得国の女性1億人が適切な家族計画を実現できるようにするために、避妊薬を手ごろな価格で提供するとともに、啓発プログラムへの財務支援を行う◇一般医薬品が不足している地域で供給状況を改善し、1億人が恩恵を受けられるようにする。
カーボンニュートラルなど環境保護の強化に向けては、◇同社の使用電力を再生可能エネルギー由来のものへと全面的に切り替える◇それでも発生する温室効果ガスについては二酸化炭素貯留と生物多様性の促進を通して相殺する◇デジタル農業などを通して主要農業市場での温室効果ガス排出量(収穫1キロ当たり)と農薬散布量をそれぞれ30%削減できるようにする。
同社はこのほか、SDGsを意思決定プロセスと取締役・管理職の報酬に反映させることで、目標実現に向けた主体的な取り組みを促進する意向だ。外部の専門家からなる独立の「持続可能性委員会」を設置し、批判的な助言を受けることも計画している。