米通商代表部(USTR)は6日、欧州連合(EU)が欧州航空機大手エアバスに対して違法な補助金の拠出を続けているとの米側の主張を世界貿易機関(WTO)が認めたことを受け、EUに課している報復関税について追加措置の原案を発表した。対象品目に航空機部品や農産品を加えるほか、既に発動している関税の税率を最大100%まで引き上げることなどが盛り込まれている。
WTOは2日、エアバス「A380」と「A350」に対するEUの補助金が続いていると認定した。EU側は販売が伸び悩んでいるA380について、既に2021年半ばまでの生産停止を決定しており、ボーイングになんら損害を与えていないと主張したが、WTOは同機の生産が続いている限りボーイングの市場シェアに一定の影響が及ぶと指摘。不当な補助金の拠出が続いているとする米側の主張を支持した。
トランプ政権は10月18日、WTOの紛争処理機関がEUからの輸入品に年間75億ドル相当の追加関税を課すことを正式に承認したことを受け、報復措置を発動した。対象となるEU製品は約160品目に上り、民間航空機に10%、その他の工業品とワイン、チーズ、スコッチウイスキー、オリーブなどの農産品に25%を上乗せしている。
USTRの原案によると、追加措置はエアバスを支援するフランス、ドイツ、英国、スペインから輸入する航空部品を対象品目に加えるほか、魚介類や金属、衣類などに最大100%の追加関税をかけるという内容。来年1月13日まで意見募集を行い、反応を踏まえて最終決定する。
EUと米国はエアバスと米ボーイングに対する補助金の違法性をめぐり、2004年からWTOを舞台に争ってきた。WTO紛争処理小委員会(パネル)は両社に対する開発支援や優遇税制などが違法な補助金にあたるとの裁定を下し、双方に是正措置を命じた。しかし、EUと米国はともに相手がWTOの決定に従わず、引き続き補助金の支給を継続していると主張し、相互に再提訴。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金継続は不当との最終判断を下したのに続き、今年3月には米国によるボーイングへの補助金継続も不当と認定した。約15年にわたる紛争は両者の痛み分けとなっており、EUもWTOの承認が得られれば、米側に対抗して報復関税を発動する構えをみせている。