水素経済戦略を独政府が作成へ

水素経済の実現に向けてドイツ政府が動き出した。二酸化炭素(CO2)を排出しない水素の生産技術の確立や、産業・交通セクターでの利用体制構築を通して同分野で世界を主導する国となるとともに、CO2の排出削減を加速する考えで、経済省は「国家水素戦略」という名の政策原案を関係省庁に送付した。経済紙『ハンデルスブラット』などが報じた。

経済省は水素の製造と利用を促進する方針だ。まずは2030年までに、定格消費電力で計3〜5ギガワット規模の水電解水素製造施設を国内に構築。ドイツの水素消費量の20%を確保する。

水素の製造には(1)水を電気分解する(2)天然ガスから水素を取り出す——の2方式がある。CO2が排出されないのは(1)の水電解製造方式だが、電力コストがかさむことから現時点で商業的に実用化されていない。このため当面は現行方式の(2)に頼らざるを得ない状況だ。このため経済省は水素の取り出しに伴って発生するCO2を地中に貯留し、大気中に放出されないようにすることを考えている。

水電解方式の水素製造コスト引き下げに向けては、電力料金に上乗せされている再生可能エネルギー助成分担金などの費用免除を検討しているもようだ。

電解用の電力には再生可能エネルギーを利用する。火力など在来型発電はCO2を大量に放出することから、温暖化対策上、好ましくない。

風力や太陽光などの再生エネを用いた発電は発電量が天候に大きく左右される。このため、例えば風が強く風力風車の発電量が多くなりすぎると送電網に過度の負担がかかり、大規模な停電につながる恐れがあることから、送電網事業者はそうした場合、風力発電の停止を要求。発電できなかった分の補償金を風力発電パークの運営事業者に支払っている。そのコストは電力料金に上乗せされて最終消費者が負担する。

強風時に発電した余剰電力を水素などに変換して貯蔵する技術(パワー・ツー・ガス)を商業的に確立すれば、エネルギーを有効活用できるうえ、無駄なコストも大幅に削減できる。このため、複数の企業連合がパワー・ツー・ガスの実現に向けて準備中だ。

経済省は水素を、化学・鉄鋼・セメントなどエネルギー集約型産業や交通、暖房で使用することを想定している。

水素を全国に供給する供給網も構築する考えだ。これについては既存の天然ガスパイプラインを活用する構想をパイプライン運営事業者の業界団体がすでに作成している。

経済省は水素の生産から供給、利用にまたがる経済システムを他国に先駆けて確立し、これを国外に輸出することも狙っている。

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