テューリンゲン州で最小政党FDPから首相選出、極右AfDなどの支持で

独東部テューリンゲン州の州議会で5日、州首相指名選挙が行われ、中道右派・自由民主党(FDP)のトーマス・ケメリッヒ議員が現職のボド・ラメロー首相(左翼党)を破って新首相に選出された。FDPは同州議会で議席数が最も少ない政党。国政与党のキリスト教民主同盟(CDU)と移民排斥を訴える極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」が最終投票で支持に回ったことから、予想外の首相が誕生した。ただ、ケメリッヒ新首相は政権運営の経験がないうえ、議会内での勢力が弱いため、政権運営は困難が予想される。

同州では昨年10月に州議会選挙が行われ、AfDが得票率を前回の2倍強へと拡大。左翼党もラメロー首相の人気が追い風となって勢力を拡大し、CDUを抜いて州第一党へと浮上した。

各党の獲得議席数は左翼党が29、AfDが22、CDUが21、社会民主党(SPD)が8、緑の党とFDPが各5だった。合計は90で過半ラインは46。ラメロー首相のもとで同州の政権を担ってきた左翼党、SPD、緑の党の3党は合わせて42で過半数に届かず、中道のCDU、SPD、緑の党、FDPの4党も計39にとどまった。AfDと連立を組む政党はないため、議会の過半数を確保できる選択肢は(1)左翼党とCDUの連立(2)左翼党とSPD、緑の党の3党にFDPを加えた4党連立——の2つしかなかった。

だが、CDUとFDPは左翼党との連立を拒否。次期政権は少数与党政権となるのが避けられない状況となっていた。

州首相指名選挙は計3回、行われた。第1回選挙では左翼党、SPD、緑の党が支持するラメロー首相と、AfDのクリストフ・キンダーファーター議員が立候補。ラメロー首相は大差で勝ったものの、首相選出に必要な過半数を獲得できなかった。第2回投票でも同じ結果となったことから、3回目の投票が実施された。この第3回投票でFDPのケメリッヒ議員が初めて立候補したため、3人が争う格好となった。

第3回投票に先立ち、それまで棄権していたCDUはケメリッヒ議員支持を表明した。棄権を続けるとラメロー首相の再選が避けられなくなるためだ。AfDはCDUのこの意思表明を踏まえ、自らの候補であるキンダーファーター議員でなくケメリッヒ議員に投票することを決めたもようだ。キンダーファーター議員の得票数は第2回投票の22から0へと落ち込んだ。CDUに対しては、AfDにキャスティングボート(決定権)を握らせたとの批判が出ている。

ケメリッヒ議員は得票数が45で、過半数に届かなかったものの、第3回投票では最も多くの票を得た候補が首相に選出される決まりとなっていることから、新首相となった。

FDPは州与党の座を確保したものの、連立先は決まっていない。状況からみて、CDUと連立する可能性が高いとみられる。ただ、議席数がCDUの4分の1以下に過ぎないため、その場合は閣僚ポストの大半をCDUが手にすることになる。政権運営でもCDUが主導権を握る公算が高い。また、過半数議席を大幅に割り込む少数与党政権となるため、法案を成立させるためには左翼党ないしAfDの支持を取り付ける必要があり、政権機能が麻痺する懸念がある。

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