自動車大国スロバキア、依存過多に懸念

人口当たりの自動車生産台数で世界トップを走るスロバキア。輸出高の4分の1強を担うなど、自動車産業は同国経済の大黒柱だ。しかし、単独の産業に偏重する経済のあり方に懸念の声も上がっている。30年前の体制転換に伴う軍需産業の衰退で、大量の失業者を出した経験があることも、その背景にある。

スロバキア金属産業労組のマヒャナ会長は電気工として体制転換を迎えた。当時のスロバキアは旧ソ連圏の兵器生産を一手に担っていたが、ソ連崩壊で需要がなくなり、わずか2年で17万人が失職した。失業率は実に27%に上ったという。

自動車産業は、技術のある労働者を軍需産業から受け継ぐ形で発展した。独フォルクスワーゲン(VW)のほか、韓国・起亜自動車、仏プジョー・シトロエン(PSA)、英ジャガー・ランドローバー(JLR)が工場を構え、低価格車から高級車まで幅広いモデルを手がける。部品メーカーも進出した。人口千人当たりの生産台数は2018年に198台となり最高記録を更新した。

それでも、自動車産業への過度の依存が懸念されるのは、電気駆動車の普及で脱エンジンの傾向が進みつつあることや、スロバキアの立地競争力が弱まっているためだ。経済社会学研究所(ブラチスラバ)のヴラヒンスキー氏は「隣国も税制、電子政府、汚職対策などで大きな進歩を遂げている。15~20年前のスロバキアが持っていた、労働力の豊富さ、人件費の低さといった強みの多くが、すでに失われている」と説明する。

政府はこれまでに、単一産業への依存からの脱却を目指し、デジタル化戦略を閣議決定した。しかし、具体的な施策はまだ明らかにされていない。

マヒャナ労組会長は今後の道筋について、中小企業の体力強化を提案する。スロバキアの雇用の7割を担う中小企業が、多様な分野でより大きな付加価値を生み出せるようにすることが、経済の強化と安定につながるとの立場だ。

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