ドイツのアンドレアス・ショイアー交通相は17日、リニアモーターカーの国内敷設に向けて実行可能性調査(フィジビリティスタディ)を実施すると発表した。近距離での利用を想定している。同国ではこれまで、リニア計画がすべてとん挫しており、実現すれば初の実用路線となる。
独中堅建設会社マックス・ベクル開発したが近距離用の全自動リニアモーターカー「トランスポート・システム・ベクル(TSB)」を、ミュンヘン空港の敷地内に敷設することを検討する。第1ターミナルと第2ターミナル、および空港から離れた場所にある駐車場をリニアで結ぶ考えだ。
実行可能性調査は独コンサルティング会社トランスポート・テヒノロジー・コンサルトが引き受ける。TSBの技術的、経済的、環境的な優劣を従来型の近距離交通手段と比較する。12月の調査完了を予定している。TSBの敷設期間は2年程度のため、早ければ2023年にも運転を開始することになる。
ドイツでは以前、ティッセンクルップとシーメンスが中心となって同国版リニア「トランスラピッド」を開発した。だが、国内の敷設計画は長距離路線も短距離路線も採算が合わずにすべてとん挫。実現したのは上海浦東国際空港と上海郊外を結ぶ30キロ強の路線1カ所にとどまる。トランスラピッドの開発はエムスラント地方のテスト路線で2006年に起きた死亡事故を受けて停止された。
同開発にはマックス・ベクルも関与していた。同社は事故から2年が経過した08年、近距離用であれば採算が合うと考え、単独開発に乗り出した。
本社所在地ゼンゲンタール(ニュルンベルクの南東およそ40キロ)にある全長800メートルのテスト路線で試験走行を行ったうえで、中国・成都に3.5キロのテスト路線を建設。成都ではすでに8万3,000キロメートル以上の試験走行を実施した。
TSBに対してはミュンヘン空港のほか、ミュンヘンの近距離交通機関連合MVVが関心を示しており、マックス・ベルクは地元バイエルン州交通省を交えて協議を進めている。TSBは最高速度が時速150キロに上ることから、MVVが採用を決めればミュンヘンの通勤圏が広がり、同市の住宅不足緩和につながる可能性がある。
ミュンヘンには以前、空港と中央駅を結ぶ全長37.4キロメートルのリニア(トランスラピッド)路線を敷設する計画があったが、コスト高や訴訟リスクを受けてとん挫した経緯がある。