英国のジョンソン首相は11日、国内の主要都市を結ぶ高速鉄道「ハイ・スピード2(HS2)」を敷設するプロジェクトについて、継続を認めると発表した。同事業はコストが高すぎるなどとして批判を浴びているが、首相は国家にとって重要なインフラ整備事業だとして、予定通り進めることを決断した。
英国はビクトリア朝時代に整備された鉄道網に現在も大きく依存しており、高速接道は英仏海峡を通ってロンドンとパリを結ぶ「HS1」(2007年開通)があるだけだ。高速鉄道で主要都市が結ばれるフランス、スペインなどに大きく後れを取っている。
HS2はこうした状況を改善するため、政府が2012年に承認したプロジェクトで、ロンドンとイングランド中北部を最高時速360キロで結ぶ。総延長は約530キロメートル。計画は2段階で進められ、第1期ではロンドンとバーミンガムを結ぶ約220キロ、第2期ではバーミンガムからマンチェスターとリーズの2方面に分かれる区間を建設する。第1期は26年の開業を目指しており、既に工事が始まっている。
同プロジェクトをめぐっては、約560億ポンド(約8兆円)と見積もっていた事業費が、最大1,060億ポンドに跳ね上がると試算されていることや、自然破壊を招くことへの批判が多く、見直しを求める声が与党・保守党内からも出ていた。
ジョンソン首相は下院で行った演説で、不十分な鉄道インフラが国家の障害になっているとして、閣議で事業継続に「青信号が出た」と発言。「どれだけ困難で、論争が起きようとも、国のあらゆる地域の繁栄につながる」として、HS2継続を宣言した。
HS2は首相の決定を受けて、4月に本格的な工事が始まる見込み、ただ、開業が遅れるのは必至で、ジョンソン首相は第1期の開業が当初予定の26年から30年になるとの見通しを示した。
一方、ジョンソン首相はコスト問題に関して、これまでコスト管理が甘かったことを認め、コスト管理の強化が必要と指摘。コスト管理担当の閣僚ポストを新設する意向を表明した。