仕事場の室温は一定の範囲内に収まっていなければならない。これは被用者の安全・健康を損なわないよう職場の環境を整備することを雇用主に義務づけた職場政令(ArbStaettVO)3a条1項に基づいて職場規則(ASR)で定められたルールである。室温が高すぎても低すぎても違反である。このルールに絡んだ係争でフライブルク行政裁判所が昨年12月に決定(訴訟番号:4
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4800/19)を下したので、ここで取り上げてみる。
裁判は商店の店主が労働保護署(日本の労働基準監督署に相当)を相手取って起こしたもの。原告の商店は室温が低すぎるとの顧客からの苦情が2018年2月に労働保護署に入ったことから、職員が赴いて調べたところ、冬季の室温が14~15度しかないことが確認された。同商店の場合、ASR
A3.5の規定により、室温が店舗で17度、トイレで21度以上なければならないことから、労働保護署は改善を命令。これを受けて店主は温風器と輻射熱暖房機器を導入した。
だが、暖房が避難・救助路をふさいでしまったうえ、火事を引き起こす恐れもあったことから、被用者の安全を義務づけた職場政令3a条1項に別の意味で抵触。労働保護署は新たな措置を店主に繰り返し求めたが、店主の措置が不十分だったため19年12月5日付の文書で、被用者の就労禁止を店主に命令した。
原告はこれを不服として提訴したものの、フライブルク行政裁は12月17日付の決定で、原告の改善措置は不十分だとして訴えを退けた。度重なる改善命令を受け、なおかつ十分な時間があったにもかかわらず、適切な措置を取らなかったと言い渡した。