新薬の導入でドイツは欧州1位、EMAの認可からわずか119日で上市

ドイツは新たに開発された特許薬(新薬)を欧州で最も積極的に導入する国であることが、独民間医療保険研究所(PKV)の調査で分かった。導入数と導入までの時間の短さでともに1位となっている。PKVの調査レポートをもとに『フランクフルター・アルゲマイネ』紙が報じた。

それによると、2015~17年の3年間に欧州医薬品庁(EMA)が認可した新薬は計121種類に上った。ドイツではそのうち104種類が処方対象として認められており、欧州で最も多い。2位はオーストリアで102種類。両国は医療福祉が発達したスカンジナビア諸国の最大75種類を大幅に上回っている。

EMAの認可から自国市場に上市されるまでの期間もドイツは平均119日と最も短く、2位のスイス(同171日)に大きく差をつけている。オランダは220日とドイツの2倍弱で、欧州平均は426日に達する。

ドイツは特にがん治療薬の分野で新薬導入に前向きで、15~17年にEMAが認可した31種類のうち30種類が処方対象となっている。18年に認可されたがん治療薬がすべて処方されているのはドイツだけだ。また、19年認可の転移性去勢感受性前立腺がん治療薬「アーリーダ」は現在、ドイツでしか処方されていない。

がん治療薬が独市場に導入されるまでの期間は平均82日と極めて短く、2位のオランダの半分に過ぎない。欧州平均は445日に上る。

希少病治療薬(オーファンドラッグ)でもドイツは欧州トップを走っている。2000年以降にEMAが認可した同分野の治療薬143種類のうち、ドイツでは93%に当たる133種類が利用されている。フランスは108種類で、英国は68種類にとどまる。

ドイツが新薬を速やかに導入する背景には、医療技術に関する情報を医学的、社会的、経済的、倫理的な観点から総合的に評価する「医療技術評価(HTA)」で同国が迅速導入を可能にする制度を採用していることがある。費用対効果の最終評価が下される以前に新薬を健康保険の給付対象とすることができるのだ。PKVはこのほか、◇新薬メーカーにとってドイツ市場の魅力が大きい◇医療インフラが充実している――も大きな要因だとしている。

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