雇用主に企業年金関連情報の通知義務はあるのか?

企業年金の契約を被用者が締結する前に、同年金に関する情報を提供することを雇用主は義務付けられているのであろうか。この問題を巡る係争で最高裁の連邦労働裁判所(BAG)が2月18日に判決(訴訟番号:3

AZR

206/18)を下したので、ここで取り上げてみる。

裁判は自治体の元職員が雇用主である同自治体を相手取って起こしたもの。同自治体は国家助成付き事業所(企業)年金を貯蓄銀行系の年金基金を通して被用者に提供することを決め、同年金基金との間で枠組み契約を2003年3月20日に締結した。これを受けて同自治体では4月9日に職員集会が開催され、貯蓄銀行の行員が事業所年金商品の説明を実施。原告は給与の一部を掛け金として拠出する契約を結んだ。

原告は2014年に退職した。15年初頭に事業所年金を一括受給したところ、03年の法改正に基づいて健康保険と介護保険の保険料が同年金に課されたことから、両保険料の相当額を補償するよう要求して提訴した。事業所年金の一括受給に健康保険と介護保険の保険料を課す方向で法改正手続きが当時、行われていたことを、被告自治体は年金基金との契約前に職員に知らせる義務があったにも関わらず行わなかったというのが原告の立場だ。両保険料が課されることを知っていれば、別の年金を選んでいたと主張している。

原告は一審で敗訴したものの、二審で勝訴。最終審のBAGで再び敗訴した。判決理由でBAGの裁判官は、雇用主には被用者の資産利益を守る義務はないことを確認したうえで、被用者に与えた情報が誤っていたがゆえに被用者が損害を被った場合は保証責任があると指摘。被告自治体は原告に誤った情報を伝えておらず、補償義務はないとの判断を示した。03年の法改正手続きについて被告が原告に誤った情報を仮に伝えていたとすれば、補償義務が発生していたとしている。

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