Ifo経済研究所のクレメンス・フュスト所長などドイツの有力経済学者7人は11日ベルリンで共同記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて同国経済が景気後退(リセッション)局面に陥ることが避けられなくなったとの見解を表明した。政府がこれまでに打ち出した経済支援策は不十分だとして、一段と踏み込んだ対策を迅速に実施することを求めている。ヴュルツブルク大学のペーター・ボーフィンガー教授(政府経済諮問委員会=五賢人委員会の前委員)は欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁(当時)がユーロ圏の金融危機に際して、ユーロ存続のために「必要なことは何でもやる」と明言し市場を安定させた例を挙げ、ドイツ政府もそうした姿勢を示すよう強く促した。
政府は操短手当の支給基準を年末まで緩和する時限法案を10日に了承した。本来のルールでは、全従業員の30%以上が操短の対象となる事業拠点でないと手当が支給されないが、これを10%へと引き下げる。法案にはこのほか、◇操短手当を派遣社員にも適用する◇社会保険料の雇用者負担部分を連邦雇用庁(BA)が全額、肩代わりする——ルールを盛り込んだ。同法案を連邦議会(下院)と連邦参議院(上院)の可決を経て4月前半に施行する意向だ。
政府は企業の資金繰りを支援するために納税猶予措置なども検討している。また、状況が悪化した場合は必要な対策を迅速かつ効果的に行うとしている。
有力エコノミストらはこれらの措置だけでは新型コロナに伴う経済危機に対応できないとして、◇納税遅延の滞納税を見合わせる◇所得税納税義務者の90%を連帯税の課税対象から除外する措置を、本来の来年1月から今年7月に前倒しして導入する◇所得税を一時的に引き下げる——ことを要求。また、究極の手段として、企業救済基金を設立し、経営が悪化した企業に国が資本参加できるようにすることを提言した。財政赤字の計上を回避する「シュヴァルツェ・ヌル(黒字のゼロ)」政策については棚上げを求めている。
キール世界経済研究所のガブリエル・フェルバーマイル所長は、新型コロナの流行で10年以上続いたドイツ経済の成長は終止符を打ったと指摘したうえで、今年上半期は「確実に」景気が後退すると明言した。リセッションが1年続く可能性も排除していない。