独北部の都市州ハンブルクで23日、州議会選挙が行われ、即日開票の結果、同州与党の緑の党が勢力を倍増させる躍進を遂げた。今回の州議選では、今月上旬から続く東部州テューリンゲンでの州議会の混乱と、19日に起きた極右による移民系市民の銃殺事件が影響。中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)と自由民主党(FDP)は得票率が大きく低下し、極右の「ドイツのための選択肢(AfD)」も前回を下回った。
緑の党は得票率を前回(2015年)の12.3%から24.2%へと拡大し、CDUを抜いて第2党に浮上した。環境意識の高まりを背景に若い世代の支持率が都市部を中心に近年、上昇していることが背景にある。30歳未満と30~44歳の年代では得票率が1位となった。
緑の党と連立を組む同州第1党のSPDは前回の45.6%から39.2%へと6.4ポイント低下した。減少幅は全政党のなかで最も大きかったものの、同党の勢力が全国レベルで急速に衰えていることを踏まえると良好な数値だ。SPDのペーター・チェンチャー州首相の人気が高いほか、住宅価格・家賃の高騰を受けて社会的な公正を旗印とする同党に多くの有権者が期待していることが大きい。急進左派の左翼党は0.6ポイント増の9.1%へと得票率を伸ばした。
CDUは4.7ポイント減の11.2%となり、ハンブルク州議選で過去最低、全国の州議選でもこれまでで2番目に低い水準へと落ち込んだ。テューリンゲン州首相選出選挙で、FDPのトーマス・ケメリッヒ議員を州首相に選出した際に、結果的とはいえ極右のAfDと協力したことが響いた格好だ。CDUの支持層が高齢化で縮小している影響も見逃せない。
FDPもテューリンゲン州首相選挙での不手際が響いて得票率を7.4%から4.9%へと落とした。選挙管理委員会の当初の発表では得票率が5.0%とされていたが、緑の党の得票とFDPの得票を取り違えていた投票所があったことが24日に判明。再集計の結果、FDPは比例区での議席獲得に必要な最低ラインである5%を割り込み、同区の全議席を失った。小選挙区で1人が当選したことから州議会にはかろうじて踏みとどまったものの、議席数は9から1へと激減した。
ドイツの選挙は小選挙区制を加味した比例代表制を採用している。政党に投票する比例区では得票率が5%に達しないと議席を獲得できないが、そうした小政党の候補者でも小選挙区で当選すれば議席を獲得できる。
AfDの得票率は6.1%から5.3%へと下落した。独西部のハーナウで極右思想に染まった元銀行員の失業者が移民系市民9人と自らの母親を殺害したうえで、自殺した事件が響いたもようだ。事件直後に行われた全国の有権者アンケート調査では、同党の支持率が低下していた。AfDにはインターネットでの情報発信や集会での発言を通して外国人排斥を煽る党員や議員が多いことから、今回の事件に対する同党の共同責任を問う声は強く、事件に衝撃を受けた支持者の一部が離反したとみられる。
各党の獲得議席数はSPDが54、緑の党が33、CDUが15、左翼党が13、AfDが7、FDPが1となっている。合計は123で、過半数ラインは62。州の新政権はSPDが中心となって樹立することになる。
チェンチャー州首相は緑の党との連立維持に前向きな姿勢を示している。緑の党との政権合意が仮に実現しない場合は、CDUないし左翼党との連立を模索することになる。