独アンゲラ・メルケル連邦首相と16州の首相は22日の電話会議で、市民の移動の自由を制限することなどを取り決めた。新型コロナウイルスの感染拡大を鈍化させるために、これまでは自粛を呼びかけてきたが、これを軽視・無視する市民が少なくないことから、強制措置を発動することにした。違反者には制裁が加えられることになる。
国(連邦)と州は感染拡大のスピードを鈍化させて医療機能を維持するために学校と保育施設の閉鎖、国境管理の導入を矢継ぎ早に導入。16日にはスーパーマーケットや薬局、銀行など基本的な生活の維持に必要な店舗を除いてサービス事業者に営業停止を命じることを取り決めた。
その際、市民には不急不要の外出を控えるよう呼びかけていた。治療法とワクチンがない現時点で感染者が急速に増えると、高齢者と基礎疾患を持つ人が特に大きなリスクにさらされるうえ、医療機関がパンクし重篤な患者に適切な治療を施せなくなる恐れあるためだ。メルケル首相はテレビ演説で「ウイルスに対する闘い」に各人が責任を持って取り組むことを要請していた。
大多数の市民はこれを真剣に受け止め、注意深く行動するようになったものの、一部の市民は事の重大性を理解せず、公園やスポーツ場に集まるなど感染拡大を助長する行動を止めなかった。「コロナパーティ」を開く若者もいた。
こうした状況を放置すると、医療がなかば「崩壊」し毎日、数百人の死者を出すイタリアのような状況に陥りかねないことから、国と州は市民の行動を規制する指針を取り決めた。具体的には◇家族以外の人との接触を必要最低限に抑制する◇公共の場では他人と最低1.5メートル、できれば2メートル以上の距離を保つ◇公共の場に家族を除いて3人以上で滞在することを禁止する◇外出は通勤、子供や高齢者の緊急ケア、買い物、通院、会議への参加、どうしても外せない予約や試験、救援・救助、屋外での一人での運動や散歩などを除いて禁止する◇飲食店はデリバリーとテイクアウトを除いて禁止する◇理容・美容、コスメティック、マッサージなど顧客と至近距離で作業するサービス事業者も営業を禁止する◇職場では衛生規定を遵守し、従業員と訪問者を感染から守る措置を施す――を取り決めた。
国と州は16日の取り決めではレストランの営業を最大6時から18時まで認めていたが、レストランが営業していると市民の外出を誘発し、人々が狭い空間に集まることにつながることから、今回、店舗での飲食サービス禁止を決めた。
これらの措置に実効力を持たせるため、警察は巡回を行う。メルケル首相は「これは奨励でなく規則だ」と述べ、違反者には罰が下されることを強調。特に政府の自粛要請を軽視・無視してきた市民に対し遵守を促した。
今回の取り決めは差し当たり2週間、実施される。必要に応じて延長される。