製薬会社の特許を制限、新型コロナ対策で

新型コロナウイルス対策の一環でドイツ政府が作成した「全国的なエピデミック状況における住民保護法案(エピデミック対策法案)」が27日、連邦参議院(上院)で可決された。同法案はすでに連邦議会(下院)を通過しており、近く施行される見通しだ。同法案が発効すると、国は必要に応じて製薬会社や研究機関が持つ医薬品などの特許権を制限できるようになる。

新型コロナに対しては現在、特効薬もワクチンも存在しない。ただ、多くの企業がワクチン開発に取り組んでいるうえ、他の疾患を対象として認可されている医薬品のなかに効果が期待できるものもあることから、政府は新型コロナへの薬効が確認された場合は速やかに活用したい考えだ。

そうした医薬品の特許を持つメーカーが薬価や他の国での投入を優先したいとの思惑を理由にドイツでの販売を拒否する可能性もある。このためエピデミック対策法案には、公共の福祉と国の安全のために連邦保健省は特許で保護された発明を活用できるとの規定(5条)が盛り込まれている。

同規定の根拠となるのは特許法13条の規定だ。同条には、国は特許権者に適切な報酬を支払いうことで特許技術を利用できると明記されており、特許権者が同技術の利用を拒否した場合でも他のメーカーに製造を委託することができる。国がこの規定に記された権限を行使したことはこれまでないが、経済・社会に甚大な影響をもたらしている新型コロナを抑え込むために今後、同権限を発動する可能性は十分にある。

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