独複合企業ティッセンクルップは25日、業績不振の鉄鋼部門の再建策で金属労組IGメタルと合意したと発表した。生産ネットワークの最適化や製品ポートフォリオの見直し、追加投資を通して競争力を強化することが再建策の狙い。これに伴い従業員3,000人を削減する。
同社は経営の重荷となっていた鉄鋼部門をタタ製鉄(インド)の欧州事業と合併化することで財務から切り離す方針だったが、EUの欧州委員会の反対でとん挫したことから、自力再建に切り替えた。
鉄鋼部門は市場環境悪化のほか、老朽化した施設や過剰生産能力、品質低下などの問題を抱え、利益が低迷している。同社はこうした問題を解決するために工場を統廃合する意向で、独西部のデュースブルクにある統合生産拠点を強化。圧板生産事業からは撤退する。
ポートフォリオの見直しでは将来性と収益性の高い製品を強化する。具体的には表面と中の鋼が異なる多層鋼、軽量鋼、高い表面品質を持つ製品、電動車で用いられる高品質の無方向性電磁鋼板に注力する。
鉄鋼部門ではこれまで、年5億7,000万ユーロの投資を計画していた。同社は今回、今後6年間に総額で約8億ユーロを上乗せすることを決めた。
従業員は今後3年間でまず2,000人を削減する。残り1,000人は2026年までに整理する予定。分野別では管理が1,000人、圧板が800人で、残り1,200人は生産ネットワークの最適化に伴い削減する。
人員削減では経営上の理由による整理解雇を行わない。削減の対象とならない従業員は26年3月末まで雇用が保障される。
労使は今回、新型コロナウイルスの感染拡大への対応策も取り決めた。操業短縮を行う場合は国が支給する操短手当(手取給与の60~67%)に上乗せを行い、対象となる被用者が給与の80%を取得できるようにする。また、従業員に今年支給予定だった特別手当1,000ユーロを休暇に振り替える。