欧州保険年金監督局(EIOPA)は2日、域内の保険会社に対し、配当支払いや自社株買いを一時的に停止するよう要請した。新型コロナウイルスの感染拡大で金融市場が混乱し、業績が悪化した場合でも事業を継続できるよう、株主還元を控えると共に、賞与の支給も見合わせるよう求めた。
新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの保険会社では保険金の支払い増のほか、市場の混乱による金利や株価下落などで業績の悪化が見込まれる。EIOPAは声明で「保険会社と再保険会社は困難な状況に置かれても保険契約者を保護し、潜在的な損失を吸収できるよう、高いレベルの自己資本を確保し続ける必要がある。同時に現行の報酬制度や慣行を見直し、それらが慎重な資本計画と現在の経済状況を反映したものかどうかを確認する必要がある。現状では報酬ポリシーの業績連動部分は保守的なレベルに設定したうえで、支給見合わせを検討すべきだ」と指摘。法的に配当金や多額の変動報酬の支払いを要求されると考える場合、各国の規制当局にその根拠を説明するよう求めた。
ドイツの保険最大手アリアンツの広報担当者はロイター通信に対し、「業績は良好だ」と強調。19年分の配当支払いと15億ユーロ規模の自社株買いを予定通りに実施する意向を示した。一方、ミュンヘン再保険は20年3月期の業績予想を下方修正したうえで、自社株買いは撤回するものの、配当金は予定通り支払う方針を示している。
新型コロナウイルス問題への対応をめぐっては、欧州中央銀行(ECB)が3月27日にユーロ圏の銀行に対し、少なくとも2020年10月まで株主への配当支払いや自社株買いを控えるよう要請。一方、英国の大手銀行は31日、英イングランド銀行(中央銀行)の要請に応じ、20年中の配当支払いを中止すると表明している。