バークレイズやHSBCホールディングスをはじめとする英国の大手銀行は3月31日、少なくとも2020年末まで株主への配当支払いを中止すると発表した。新型コロナウイルスの感染拡大で銀行の業績悪化が懸念される中、英イングランド銀行(中央銀行)は株主還元を控えるよう求めていた。各行は中銀の要請に応じ、資本を温存して損失への備えや中小企業などへの支援を優先する。
配当支払いの中止を表明したのは両行の他にロイズ・バンキング・グループ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、スタンダードチャータード。ロイター通信によると、バークレイズは約10億ポンドに上る19年分の配当金の支払いが4月3日に迫っていたのをはじめ、5月上旬にかけて5行で総額80億ポンドの配当支払いを予定していた。しかし、新型コロナウイルス問題への対応を優先させるため、配当や自社株買いの中止を求めるイングランド銀傘下の健全性規制機構(PRA)からの強い圧力を受け、すべて取りやめた。
イングランド銀のウッズ副総裁は31日、大手行の首脳に株主還元の中止を求める書簡を送り、監督権限をちらつかせて同日夜までに回答するよう迫っていた。PRAは声明で「株主は配当金を受け取れなくなるが、経済が混乱する中で銀行が果たすべき役割を考えると、これは賢明な予防的措置だ」と各行の決定を歓迎した。
新型コロナウイルス問題への対応をめぐっては、欧州中央銀行(ECB)も3月27日にユーロ圏の銀行に対し、少なくとも10月まで株主への配当支払いや自社株買いを控えるよう要請した。ECBは同措置により、約300億ユーロの節減が可能と試算している。