欧州では新型コロナウイルスの新規感染者数や死者数の増加が鈍化傾向にあることから、イタリアやスペインなど事態が深刻な国でも段階的に外出制限を緩和したり、経済活動を再開する動きが広がっている。
イタリアのコンテ首相は26日、新型コロナの感染拡大を受けて導入した外出禁止などの措置を5月4日から段階的に緩和すると発表した。同国では3月10日から食料品の買い出しなどを除いて外出を原則禁止してきたが、同日から同じ州内であれば運動のための外出や家族を訪問することなどが可能になる。レストランやバールはテイクアウトのみ営業が認められ、葬儀も執り行えるようになる。ただし、外出の際は引き続き移動理由を記載した申告書の携行が義務付けられるほか、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保が求められる。一方、製造業や建設業も同日から再開が認められる。
第一弾の規制緩和が順調にいけば、5月18日からは図書館や美術館などを再開。さらに推移を見極めたうえで、6月1日以降は理髪店や美容院、レストランなどの営業を全面的に認める。一方、学校については9月まで休校措置を維持する方針を示している。
コンテ首相は感染が再拡大するリスクは残っていると強調したうえで、「ウイルスとの共生が始まる。油断すれば再び死者は増加し、経済に後戻りできない損失を与えることになる」と警告。国民と企業に引き続き万全の対策を取るよう訴えた。
また、スペインのサンチェス首相も25日、5月2日から段階的に外出制限を緩和すると発表した。同国では3月14日から食料品や医薬品の買い物と短時間の犬の散歩を除き、原則として外出が禁止されていた。緩和計画の詳細は28日に発表される見通しだが、第一弾では運動や散歩のための外出が認められる。
なお、スペインでは26日から条件付きで子どもの外出が可能となった。保護者1人が付き添い、自宅から1キロ以内の場所での散歩やランニングが1日1回、1時間まで認められる。
一方、フランスは今月13日、3月17日に開始した外出制限を5月11日まで延長する方針を打ち出したが、マクロン大統領は同日から学校を段階的に再開したい考えを示している。フィリップ首相が28日に具体的な計画を議会に提示する見通し。ルメール経済・財務相は23日、来月11日に封鎖措置が解除された場合、感染が深刻な地域を除いて全ての小売店の営業再開が望ましいと発言。規制緩和の影響を見極めたうえで、5月末までにレストランやバー、カフェの営業再開日を決定する方針を示した。
このほかオーストリアのクルツ首相は21日、5月1日から全ての小売店や理髪店などの営業を認める方針を打ち出した。400平方メートル未満の小規模店舗については今月14日から営業可能となっていたが、感染の封じ込めが成功していることから対象を拡大する。5月15日からは学校、美術館や博物館、レストランなどの飲食店(ただし人数制限などの条件付き)を再開。6月1日から国立オペラ座などに出演するプロの練習活動も再開できるようになる。