ドイツ鉄道(DB)は15日、高速鉄道30編成を電機大手の独シーメンスに発注すると発表した。二酸化炭素(CO2)排出削減に向けた政府方針を背景に鉄道の利用者が増えるとみており、高速鉄道の車両数を増やす意向だ。リヒャルト・ルッツ社長は「新型コロナのパンデミックで鉄道需要は減少しているが、環境に優しい鉄道の見通しは長期的にみると明るい」と明言した。
一世代前の「ICE3」をベースとする高速鉄道「ヴェラロ」を調達し、2022年から投入していく。取引価格は10億ユーロ。さらに60編成を追加発注することも視野に入れている。
独政府は交通セクターのCO2排出削減に向けて、国内の自動車利用を減らし鉄道利用を増やす方針で、その一環として長距離鉄道の付加価値税率を今年1月、従来の19%(標準税率)から7%(軽減税率)へと引き下げた。DBはこれが長距離鉄道の利用増につながると判断し、高速鉄道の調達入札を実施。シーメンスに白羽の矢を立てた。
DBが運行する高速鉄道の最新世代は17年12月に投入が始まった「ICE4」。ICE4は省エネ性能と快適性の面で先行モデルを大幅に上回るものの、最高速度はICE3よりも低く、営業最高速度は時速250キロに設定されている。停車駅が多いと高速鉄道のメリットを十分に引き出せないとの事情が背景にある。
ヴェラロは最高速度が時速320キロに上る。DBはヴェラロを途中停車の少ない「ICEスプリンター」として利用する意向で、まずは独西部のノルトライン・ヴェストファーレン州と南部のミュンヘン市を結ぶ路線に投入する。