化学大手の独BASFとエボニックは20日、情報技術を活用したスマート畜産のスタートアップ企業である中国の睿畜科技(SmartAHC)に出資するとそれぞれ発表した。出資額と出資比率は明らかにしていない。
睿畜はシンガポールにある南洋理工大学の卒業生が2014年に設立した企業で、上海に本社を置く。養豚経営の効率化に向けたデジタルソリューションをオーダーメードで手がけており、同分野の中国市場最大手だ。
同社のソリューションでは豚の体温、体重、家畜群の規模、餌の消費量・残量、湿度、室温などのデータをリアルタイムで収集し、人工知能(AI)で分析。投薬や餌の変更、疾患家畜の隔離など適切なアドバイスを行う。畜産農家はこれにより家畜の死亡率を引き下げるとともに、餌の投与を効率化できる。また、家畜と人の接触を最低限に抑制できることから、家畜から人、人から家畜に感染症がうつるリスクを低減できる。
BASFは農業技術(アグテック)とデジタル化を投資の重点分野に設定していることから、今回の出資を決めた。
エボテックは飼料原料の有力メーカー。スマート畜産により飼料の投与が効率化されることを踏まえて睿畜に出資する。
中国は世界最大の豚肉市場で、世界市場(年14億頭)に占めるシェアは50%に上る。中国のスマート養豚市場はアフリカ豚熱など感染症の流行や食品のトレーサビリティに対する要求の高まり、競争の激化を背景に今後10年、年率20%以上の成長が見込まれている。