EUと英の交渉、集中協議の第2週も不調

欧州連合(EU)と1月末にEUを離脱した英国は、自由貿易協定(FTA)など将来の関係の構築に向けた交渉の集中協議に入っているが、依然として双方の主張に大きな隔たりがあり、交渉は進展していない。7日から9日にかけて行われた2週目の協議も不調に終わった。

EUと英国は3月に交渉を開始したが、最大の焦点であるFTAのほか、漁業権をめぐる問題で激しく対立。こう着した状況を打開するため、新型コロナウイルスの影響でテレビ会議方式で行われていた交渉を対面方式に戻した上で、6月最終週から7月27日の週にかけて毎週、集中的に交渉することになった。

FTAではEU側が関税ゼロの維持には公平な競争環境の確保が不可欠として、英国が今後もEUの競争法や公的補助、環境、労働者の権利などに関するルールに従うことを要求しているのに対して、英国は国家の主権が損なわれるとして強く反発していることが、交渉が前進しない大きな要因となっている。

第1回の集中協議はブリュッセルのEU本部で6月29日に開始されが、同問題に関する話し合いが平行線をたどり、成果がないまま7月2日に終了。ロンドンに場所を移して行われた2週目の協議でも状況は変わらなかった。EUのバルニエ主席交渉官は9日の交渉終了後のツイッターへの投稿で、双方の主張に依然として「大きな相違がある」と述べた。

EUと英国は、同国の離脱後の急激な変化を回避するため設けられた「移行期間」が終了する2020年12月末までの合意を目指している。交渉の難航を受けてEU側は移行期間の延長を働きかけたが、英国側が応じないため、交渉は時間切れが迫っている。

EUは合意がないまま英国との新たな関係に移行することを想定しており、欧州委員会は9日、全加盟国に同事態に備えるよう求める文書を公表した。同文書は交渉が妥結するかしないかに関わらず、移行期間終了後にEUと英国の関係が変化するのは避けられないとして、各国の政府や企業、市民が予想される混乱に準備できるようEUが努力していく方針を示している。

さらに、EUのミシェル大統領(欧州理事会常任議長)は10日、移行期間終了に伴う混乱、不測の事態で悪影響を受ける加盟国を支援するため、50億ユーロの対策費をEU予算に計上することを提案した。欧州委が21年2月までに状況を検証した上で、対象国に給付する。

上部へスクロール